「若さと愚かさと底なしの虚無」バッドランズ 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
若さと愚かさと底なしの虚無
クリックして本文を読む
主人公のひとりであるホリーのナレーションと、映像として描かれていることにズレがあって、つまりはいくつかの主観が入り混じっており、逆に言えば映画は誰にも寄り添っておらず、どれだけ惹かれ合っていたとしても、結局は自分本位なキットとホリーの束の間の逃避行が淡々と綴られていく。そもそも元になった事件から共感を呼ぶようなものでもなく、劇中の2人を見ていても、一切申し開きができる要素はない。しかし荒涼とはしていても、映画は冷え冷えとはしておらず、独特の詩情を湛えている。もう何度も観ているはずだが、初めて映画館のスクリーンで観ることができて、改めてなんだこの映画は?と、奇妙で不可解な感覚に襲われた。若い頃は、なんとかここからクールさや反骨精神のようなものを見出そうとしていたが、改めて、若さと愚かさと虚無とが際立つ、底冷えのするような傑作でした。しかし、やっぱり捕まる前に石で記念碑を立てようとするキットの姿は、哀れさを通り越して笑ってしまうな。その後のスター気取りも含めてクソなりの愛嬌があって、比べるもんでもないがホリーの方がこわい。パンフ代わりの書籍を読むと、モデルになったフューゲートも映画を観ていたという。一体どんな感想を述べたのか、誰か教えてほしい。
コメントする