シン・レッド・ラインのレビュー・感想・評価
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勝者だからこその戦争観か?
静かな戦争映画が第一印象。爆発音や阿鼻叫喚は控え目か。それでいて淡々とそれぞれの心の声が聞こえる。これに徹したのはすごいと思う。戦場の実際は表現しきれないと割りきったのかな?
さらに、違和感は戦勝国の驕りというか優越感だね。敗戦側は今この瞬間で精一杯、生きるが最優先だったはず。この目線がしっくりこないのは、敗戦国民の僻みだけじゃないと思う。
愚かな上官も勝てば英雄、負ければ犯罪者。この構図は今も繰り返されるのがなんとも悲しい。戦場に英雄は要らない。
特筆はキャスティング。良く揃った感じ。エイドリアン・ブロディの次の成功を予想させる妙な存在感。ワンカット的なスター登場はおまけだな。
タイトルに込めた思い
RED LINE には一線を越える、の意味。
THIN RED LINE には少数精鋭、の意味。
そして超えてはならない一線の意味もある。
生と死の境なのか、平常と狂気なのか、光と闇なのか。何故このタイトルにしたのか、その思いは如何に。
(ワーテルローの戦いやクリミア戦争のことは分からないので置いておく)
ラストでウィットが光を失ってしまったことを揶揄したのか、激しい戦火をものともせず日常を送る島民や美しい自然との境なのか。解釈が多数あり、映画をシンプルに観たい人には眠い作品だと思う。
退屈なほど抽象的なシーンも多く、まるで戦争と平和を描く宗教画のような作品。
国破れて山河あり
この映画、人間の視点・時間軸では描かれていない。
じゃあ何の視点・時間軸かと問われても正解はない。
敢えて言えば神の視点・時間軸だろうか。(あまりにもベタ過ぎるので書いていて恥ずかしいのだが、分かりやすい例として挙げておく)
生けとし生きるモノ全てを並列に描いている。
苛烈なガナルカナル島の戦闘も、美しき島の自然も、ラストシーンで海に漂うヤシの実も。
国破れて山河あり。
人間同士が壮絶に闘い殺しあっても、想像を絶する苦難を伴って死んでいったとしても、厳然と存在し続ける山河。太古の昔から、そしてこれからも。
ラストシーンのヤシの実は新しき命の誕生の象徴なのか。人間の苦難にかかわりなくこの世界は続いていくということなのか。
これを希望とみるか虚無とみるかは観客の側に委ねられている。
睡魔との激戦
退屈。冗長。
ここまでで苦痛な映画はなかなかないかも。
戦争映画でありながら、象徴的な映像と詩的な独白が延々と続く。
そういった抽象的な演出によって、生と死を考えさせる映画なのだろうが、実質的にはストーリーはないに等しく、余程感受性な人でないとそんなレベルに至らない。
加えて、取り立ててフォーカスされるキャラクターもいないせいか、誰が誰だかわからなくなってくる。
唯一、残してきた奥さんについて散々妄想していた彼がその奥さんに裏切られるところのみ、ドラマを感じた。
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