ミシェル・ヴァイヨン : 映画評論・批評
2003年12月15日更新
2003年12月20日より日比谷映画ほか全国東宝洋画系にてロードショー
ル・マン24時間レースのスピード感に興奮
カー・レースの世界を体感し、すっかり魅了されてしまった。カナダの氷上ラリー、アイスランドの原野でのラリー、そして、ル・マン24時間レース。CGに頼らず、すべて本当に車を走らせて撮られた映像は、疾走する車を、コースを包む美しくも苛酷な自然環境とともにダイナミックにとらえ、それぞれのレースが持つ魅力を詩的に描ききっている。なかでも、実際に参戦して撮影されたル・マンは、マシンのスピード感はもちろん、ピットの緊張や観客の熱狂も生々しく、興奮の連続。スタート直前の不思議な静けさを蝶を使って示すなど、詩情あふれる描写も美しい。
また、スピードにすべてを賭けるレーサーの情熱を、表情や仕草で浮き彫りにした新鋭俳優たちも魅力的。自然を愛し、物静かな振る舞いのなかに熱き心を秘めたミシェルを孤高に演じたサガモール・ステヴナン。男っぽい世界にあって、紅一点、タフで繊細な女性レーサーを違和感なく体現したディアーヌ・クルージェ。この2人の優美さは見逃せない。
ただ、原作がコミックで、敵チームの仕掛ける罠が、あまりにも現実離れしている点が惜しい。映像に酔えれば気にならないが、人によっては違和感を感じてしまうかも。
(山口直樹)