劇場公開日 2001年5月26日

「後世まで手塚の功績を伝えるどころか」メトロポリス うそつきかもめさんの映画レビュー(感想・評価)

2.0後世まで手塚の功績を伝えるどころか

2024年3月28日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

これほどがっかりした映画も珍しい。手塚治虫の名作とは言え、初期の中編で、テーマ性をうまく抽出して見れば、古臭さも感じずにむしろ新鮮な驚きが期待できそうだったからだ。当時はテレビゲームの映像が飛躍的な進化を遂げ、映画に使われる特殊効果も含み、映像の進化は目を見張るものがあった。そんな時代に、あえて手塚をぶつけるミスマッチが、本当にクールに映ったのだ。

ところが、ソリッドな未来都市はやっぱり非現実的で、人が生活している生命感とか、躍動感みたいなものが感じられない。人工知能というか、人造生命というか、デジタルと、アナログの融合に、新しい可能性を見せてくれ、というような期待感が、音を立てて崩れていく。

そして、この頃から、なぜかパッケージソフトを手に入れただけで満足し、開封せずに未消費という現象が目立ち始める。レンタルビデオで、大量に借りてきて見ないまま返すとか、惰性で買い続けていたコミックの新刊を、読むこともなく、また同じ本を2冊買ってしまったりとか。

映画も、ご多分に漏れず封を切らないまま棚に眠っているDVDが部屋にたまっていった。時間の、やりくりが上手くいかない。そして、好奇心が追いついてこない。あれほど見たいと思っていた映画が、オープニングが始まったとたんに眠気に襲われる始末。だから、余計に、見終わった後の徒労感はひどかった。思えば、この時期、ジャパニメーションは本当に曲がり角を迎えていたのだ。

うそつきかもめ