「過去のベストを引きずるべきでない」殺人の追憶 CINE LADAさんの映画レビュー(感想・評価)
過去のベストを引きずるべきでない
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「韓国映画史上ベスト!」という評価が多い本作。
当然パッと見はサスペンス映画なのだけれど、そしてそれだけで優秀な映画なのだけれど、そうじゃないのが歴史に名を刻む理由なのだろう。
韓国国民なら誰もが知る(のであろう)事件を題材に、ジャーナリストよろしく1980年代当時の韓国社会の闇を描く作品。この「闇」が連続殺人事件だけを示すのではなく、同時に警察の所業を糾弾するあたりが素晴らしい。今の時代に観ると、取り調べコントに見えるぐらいに現実的でない内容。数十年前にこんな時代があったという事実が、シリアルキラーの存在と同じぐらいに恐ろしい。
結局捕まらない犯人から殺意の理由を聞くことはできないのだが、警察側の闇は別である。どうにも憎めない人柄や苦悩。「こんな人いるよね…」なんて感想を持って仕舞いがちだけれど、ある意味そんな普通な人たちが、焦燥的に次次と国家権力を傘に暴力的に事件を解決しようとしていく。
最後の少女が語る「普通の顔」が殺人を繰り返してきたのと同様だ。闇とは常に自分の隣り合わせにいるものなのだろう。このテーマを20年近く前に劇場で流した事実は間違いなく「韓国映画史上ベスト」だったのだろう。
そう、「だった」と表現したい。
過去形こそが、ポン・ジュノ監督への最大の賛辞だと思うのだ。
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