交渉人 真下正義 : 映画評論・批評
2005年4月28日更新
2005年5月7日より日劇2ほか東宝系にてロードショー
いろいろな意味で実に「踊る」らしい作品
「踊る大捜査線」シリーズのスピンオフとして、いろいろな意味で実に「らしい」作品に仕上がっている。そのことに、まずは感心した。
真下という男は、シリーズの主役である青島とは対照的なキャラクターだ。決して熱くならず、主張しすぎず、つかみどころがない。こいつが交渉人? 主役としての牽引力を発揮できるのか? 答えはイエス。この特徴こそが、そのまま彼の長所と思えてくるのだ。どんなピンチに陥ろうと、周りから誤解され、責められようと、決して激することなく淡々と仕事を進める真下。おお、かっこいいじゃないか!
映画の肝は、ここにある。つまり、いままでバカにされてきた真下がその真価を発揮し、プロとして周囲に認められていく。観客も(そしてユースケも)同じ道筋をたどれるところが面白いし、男と男が仕事を通して「思い」をひとつにしていくプロットこそ、「踊る」の醍醐味なのだ。彼を認めることになるふたりのプロ、國村隼と寺島進もやたらいい! このキャラの立て方、緊張感と笑いのバランスにもまた、ファンの望む「踊る」らしさがある。
ただし、「交渉人」としての仕事ぶりが鮮やかに決まっているとは言えず。事件や犯人像、謎解きの過程はやや中途半端。思えば映画版の「2」もまったく同じ印象だったっけ。ま、欠点まで「踊る」らしいってことで。
(若林ゆり)