「文句なしの満点の作品!」リトル・ダンサー 鶏さんの映画レビュー(感想・評価)
文句なしの満点の作品!
現代の格差社会を作った源流とも言うべきサッチャリズムが猛威を振るった1980年代のイギリスを舞台にしたお話でした。11歳の主人公ビリー(ジェイミー・ベル)の一家は、父親(ゲイリー・ルイス)も兄(ジェイミー・ドレイブン)も炭鉱夫という炭鉱一家でしたが、サッチャー政権による国営企業の合理化=首切り政策のあおりを受けて労働組合はストライキに突入。そんな中、ボクシングを習っていたビリーは、たまたまボクシングの練習の隣でやっていたバレー教室に惹かれてバレーを習い始め、名伯楽と言うべきウィルキンソン先生(ジュリー・ウォルターズ)に見出されてその才能を開花させていきました。
そんな本作でしたが、見所は2つ。1つはビリー役のジェイミー・ベルの名演。本作が制作された2000年当時の実年齢は14歳だったようですが、何しろ演技が素晴らしく、その上ダンスが徐々に上手くなっていく過程もリアル感満載。そのほかにも、父親や兄貴にぶっ飛ばされるのを怖れてビクビクする様や、ゲイっぽい友達と屈託なく交流するシーン、そしてロンドンのバレイ学校の受験シーンなど、本当に上手すぎる上、可愛すぎました。
2つ目の見所は、ビリーのシーンではなく、父親と兄貴の泣き崩れながらもビリーのバレイ学校行きを応援することを決意するシーン。根っからの炭鉱夫だった2人にとって、バレイなんてものは”女のやるもの”でしたが、ビリーの才能に気付いた父親が学費のためにスト破りに参加。それを見た兄貴が父親を咎めようとしたものの、父親の真意を知り兄貴も理解を示すこのシーンは、今思い出しても泣けてきます。
現実の社会問題を土台としつつ、家族の絆や少年の成長物語を描いたストーリーはもとより、ビリーをはじめとする俳優陣の演技も素晴らしく、また炭鉱の街の景色を絶妙なカメラワークで映し出していた映像も言うことなしでした。
そんな訳で、本作の評価は満点の★5とします。