「丁寧な演出と、奇跡のようなキャスティング」リンダ リンダ リンダ エリセさんの映画レビュー(感想・評価)
丁寧な演出と、奇跡のようなキャスティング
この映画の一番の特徴は、バンドの練習を頑張っているショットよりも、その結果として居眠りをしてしまったりボーッとしているショットのほうが多いところ。何かと「キラキラしてる」とか表現されがちだが、実際にはキラキラしているシーンは数少ない。
そして、メンバーそれぞれの主観はなるべく直接描かないようにしている。カメラは常に引いているし、4人のショットはなるべく均等な大きさになるようにしている。
クローズアップは本当に少ない。メンバーの感情を、顔やセリフで分かりやすく表現することを極力避けている。典型的なのは、ソンちゃんが初めてブルーハーツを聴いて泣くショット。ソンちゃんの表情は一切映さない。声も出さない。他のメンバーが騒ぎ出すことによって、我々はソンちゃんの茫然自失を知る。
この辺りはとても丁寧に演出されていて、余計な説明ショットや説明セリフがない。なので、我々は彼女たちの行動をひたする見守るように作品に没入し彼女たちに感情移入できる。
客観的なショットの積み重ねがあるからこそ、我々の感情が爆発する。ソンさんが深夜の体育館で1人でメンバー紹介するシーンで、ずぶ濡れになった本番の演奏で。我々はスクリーンの中に入り、バンドのメンバーになったような感情に揺さぶられる。
客観的な視点に、ときおり甲本雅裕の視点が挟まることも良かった。彼がバンドの練習を優しくのぞき見るショットは、我々の視点でもあるので立体的に共感できる。
丁寧な演出と、奇跡のようなキャスティング。時代を超えた幸せな映画。
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