「素晴らしい冒険と悲劇を描いた力作」白い嵐 Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
素晴らしい冒険と悲劇を描いた力作
総合:80点
ストーリー: 80
キャスト: 75
演出: 85
ビジュアル: 80
音楽: 75
練習船に乗り込んでの航海をするのだが、会ったばかりの少年たちには何もかもが新しい経験である。尖ったやつといがみあってみたり、失敗をしたり、新しいことを吸収しながら不安を抱え込みつつも期待と希望を持ってみたりと、旅の様子がとても新鮮に描かれる。少年たちは事情や悩みを抱えていたりするが、時の経過と共に得難い経験を通して成長し、過去や感情といったいろんなものを共有して打ち解けあいながら仲間になっていく姿が瑞々しく、この部分だけでも十分に青春映画として高得点をつけられる。美しい海と空を背景に荒波を超えて進んでいく帆船の姿も雄大。まさに冒険をしているということが伝わる。
そんな経験をした彼らに突然やって来る嵐。平穏な海があっという間に天候が変わってしまって、見ているこちらもいきなりのことに唖然としてとまどうほどの急激な変化だった。船も人も波に全てが呑み込まれて為す術もないような状況で、映像のほうも頑張っている。ただしもう混乱の中、誰が誰だかわかり辛い。それでも助けられなかった仲間がいるのを目の前で見てしまうのは断腸の思いである。
そしてその後の裁判。途中までで帰港出来なかったとはいえども、二万キロの冒険を成し遂げ得難き経験を一緒にして生死を共にした者たち。そんな彼らにしかわからない強い想いと団結がある。不幸な事故があろうと、彼らの経験を知らない外部の人たちに、勝手に弄繰り回され葬り去られてはたまらない。前半の冒険の話があまりに良く出来ていたので、そんな思いが良くわかり、それがここで利いてきていた。本当に起きた話が基になっているので冒険を通して成長するだけの大団円では収まらないけれど、この航海を経験した彼らの成長と心情を理解させてくれるだけのものを持った力作だった。少年たちの区別がつきにくいのが難点。