劇場公開日 2007年2月10日

「【強烈な反戦メッセージを込めた映画であり、深い深い喪失から仄かに仄かに魂の再生をして行く男女の姿を描いた物語。作品構成も申し分なき映画である。】」あなたになら言える秘密のこと NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5【強烈な反戦メッセージを込めた映画であり、深い深い喪失から仄かに仄かに魂の再生をして行く男女の姿を描いた物語。作品構成も申し分なき映画である。】

2022年4月20日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

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ー 毎日、誰にも関わることなく真面目に工場勤めをする”ハンナ”。だが、彼女は働きすぎという理由で会社から一か月間の休暇を申し渡される。
  そして、”ハンナ”が行ったのは、リゾート地ではなく、火災事故を起こしたばかりの海底油田掘削所であった。
  何故、彼女は”看護師”として傷ついた人のために海底油田掘削所に行ったのか・・。-

◆感想

 ・”ハンナ”が海底油田掘削所に行った理由は、徐々に明らかになる。彼女は火災のために火傷をして一時的に目が見えなくなっている男、ジョゼフ(ティム・ロビンス)の世話をする。
 - この時点では、”ハンナ”が哀しき過去を持つ女性であり、それ故に現在辛い状況に入る人々の元に行ったと思っていた。私の予想は大枠は外れてはいなかったが・・。ー

 ・冒頭からモノローグの様に流れる幼き子の声。これは何だろう、と思っていたが・・。

 ・”ハンナ”はジョゼフの世話をする中で、彼のユーモアに触れ、彼の人柄を知る。だが、”ハンナ”は自分の姿については、一切喋らない。
 - だが、ある日、ジョゼフが少年時代に経験した哀しき父親による出来事を聞き、”ハンナ”の心は徐々に変化していく。-

 ・海底油田掘削所で働く孤独を愛する人々、特にコックのサイモン(ハビエル・カマラ)達と交流を持つ事で、”ハンナ”の心は更に変化していく。

 ・そして、”ハンナ”が過去、自らとその親友の女性に起こった、当時住んでいた地域で起こった紛争(見ていれば、どの紛争であるかは直ぐ分かる)により、心と身体に負った深い深い傷をジョゼフに語るシーン。そして、自らの着衣を脱ぎ、目の見えないジョゼフに身体中の傷を触らせるシーン。
 - このシーンは、彼女が如何に哀しき過去を経験していたか、それ故に人との接触を断っていたかが一発で分かる哀しきシーンである。-

 ・回復したジョゼフが”ハンナ”が2年間掛かっていたカウンセラーの女性を訪れるシーン。そのカウンセラーの言葉は重い。
 ”ヒトラーが、大虐殺をする際に何と言ったか知っている?彼は、アルメニアの大虐殺は今では覚えている人はいないと言ったのよ・・。”

<ジョゼフは、カウンセラーから渡された”ハンナ”に関するビデオを見る事無く返し、再び工場で働き始めた”ハンナ”に会いに行く。
 そして、初めて平穏な生活を始めた”ハンナ”の心の声は少しずつ、減って行く・・。
 今作では、戦闘シーンは一切ないが、それ故に戦争が人の心に齎す傷を鮮やかに描き出した作品。
 そして、今作は王道の喪失と再生の物語でもあるのである。>

NOBU