「原作を読んだものとしては…」春の雪 うさぎさんさんの映画レビュー(感想・評価)
原作を読んだものとしては…
原作を読んだものとしてはひどいの一言につきる。
竹内結子、妻夫木聡の演技に文句をつけるつもりはない。
ただ、脚本、演出がひどすぎる。
原作のセンセーショナルな部分だけを、ぽんぽんと配置しましたという印象が強い。
綾倉伯爵と蓼科の会話と関係は、原作の中ではかなり後半で暴露されることで、豪華な食事の隠し味をこっそり表現したようなもにすぎない。メインではないのだよ。それを映画の冒頭にもってきて不穏感をあおる演出には、肯定できないし、この映画の方向性を示しているようで、いきなり、がっかりした。
それに物語の中心的役割を果たす、本多の軽さはひどいでしょう。本多は剣道なんかはしませんて。清顕と同じで、ずっと内省的な青年ですよ。とはいえ軟弱ではないし、行動力のある、聡明な青年なのですよ。この辺は演出、演技指導が間違っているということでしょう。
この濃密で緻密な原作を、2時間の映像に納めることは非常に難しいとは思いますけど、できないのであれば、やめればいいのである。
三島文学への冒涜である。
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