劇場公開日 1954年4月26日

「黒澤時代劇の傑作」七人の侍 Moiさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0黒澤時代劇の傑作

2024年3月31日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル、映画館

泣ける

笑える

興奮

感想

神も仏もない、戦乱が続く世界。秩序は乱れ、
その日を生きることさえ、かなわない世の中。

野伏の襲撃が横行し、苦渋し、疲弊しきった農民が
野伏退治を託す侍を傭おうと町に出てくる。生きる
事も死ぬ事も紙一重の世界で、農民達は島田勘兵衛
という義と理を兼ね備える侍に巡り会う事になる。

勘兵衛は農民の苦渋の想いを人の理として受け止め
、農民の意に賛同する侍を集める事になる。勘兵衛
が剣の腕が立ち心根の良さを認める者。勘兵衛を慕
う若き侍との出会い。戦場の古女房と呼ぶ古参の武
士との再会。さらに十戦無敗の強者武士、喧嘩巧者
で荒くれ者の自称侍を名乗る男など、勘兵衛とその
選ばれし者が、様々な人間的な魅力に溢れる人々を
集める事になる。

さらに里山での野伏軍団とのダイナミックかつ痛快
、壮絶な戦いが描かれていく。その激動の状況下に
生きる武士と農民、それぞれの立場の人間としての
生き様を生々しく克明に描き出す事により、人とは
、生きるとは、どういうことかを観るものに考えさ
せ、強烈な印象を残す。

とにかくよく考えられた完成された脚本。細かい人
物描写の上の大胆な物語の展開。世界的にも評価の
高い黒澤明監督の傑作のひとつである。

映画冒頭部分、街角を横切る侍に若き日の無名時代
の仲代達矢氏が観れる。それだけでも興奮する。

志村、三船、稲葉、加藤大、宮口、千秋、木村、
各氏の名演は知っての通り。農民達の想いを代弁す
る人足役の多々良純氏の熱演が印象的で感動する大
好きな場面の一つである。

視覚効果的にも数多くの仕掛けを創造した黒澤作品
だが、その中でも人が斬られた時の高速度撮影は、
画期的な描写であったとあらためて感じる。

劇画とはまさに是なり。息が止まる感覚に緊張感は
増すばかりである。

死の描写に殺しの美学があると言わしめた、鬼才サム・ペキンパーはこの映画に感銘し、黒澤を師と仰
ぎ、自身の作品に絶対的オマージュとして、映像ス
タイルを確立し、その後の映像クリエイター達に大
きな影響を与えたのは有名な話だ。

⭐️5

Moi
CBさんのコメント
2024年8月16日

サムペキンパー監督のくだり、そうなんですね。勉強になりました。ありがとうございます。

武士たちの中に一人だけ農民の心の男がいたことによって、「弱い農民を救う強き俺たち」というヒロイック幻想が、主人公たちからも、観ている俺たちからも消し飛び、しかしそれでも事を成し遂げようとする主人公たちの姿が、あらためて清々しく感じて、とても好きな映画です!

CB