「侍たちよ、永遠なれ」七人の侍 しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
侍たちよ、永遠なれ
レーザーディスクで鑑賞。
黒澤明監督の代表作であり、日本が世界に誇る傑作映画のひとつであり、誰もが称える問答無用の時代劇大作である。あらゆる称賛の言葉を並べても足りないくらいのマスターピース、一言では表せないたくさんの魅力が詰まった映画だと思う。
3時間27分と云う長丁場があっと言う間に感じられる圧巻のストーリーテリング。マルチカメラ方式を邦画で初採用した映画史に残る雨中の戦闘。侍と百姓たちの織り成す濃密な人間ドラマ。⋯
どこを切り取っても「エンターテインメントの最高峰」となってしまうのがすごい。圧倒的なダイナミックさを誇り、映画文化の金字塔と言っても過言では無い。その面白さは永遠に不変であろう。
侍たちのキャラクターを紹介する冒頭から百姓たちを調練し準備をする中盤、そして野武士との激戦が繰り広げられる終盤へと、それぞれのパートが時間的に均等に描かれており、終盤に向けての盛り上がりは筆舌に尽くし難い高揚感がある。
鑑賞回数を経て、勘兵衛の「勝ったのはあの百姓たちだ。我々ではない」が沁みるようになった。卑屈で弱い存在に見えても、その実したたかに生きている百姓たちの姿には、ハンパない熱量で語り掛けて来るものがあるように感じたからだ。
特筆すべきは、「東京物語」や「ゴジラ」、そして本作と、世界中から名作・傑作と称される映画が同じ時期(1953年~1954年)に公開されていたことである。当時の日本の映画産業の勢いを感じると共に、名匠たちの果敢な映画表現への挑戦が最も花開いていた時期なのではないだろうか。まさにゴールデン・エイジだ。これらの作品が今尚日本のみならず、世界の映画監督たちに影響を与えているのは本当にすごい。世界中から愛される作品を持つ国に生まれたことを心の底から誇りに思う。
[余談]
初めて本作を観たのは近所の図書館にあったレーザーディスクでだった。当時大学受験を控えた夏休みで、近くの公立図書館のエアコンが効いた自習室で勉強していた私は、ちょっと疲れたので気分転換に何か映画でも観ようかなと思い、タイトルを知っていると云う理由だけで本作に手を出したのであったが、それはいい意味で大きな間違いだった。
面白過ぎたために、勉強そっちのけでイッキ観してしまったのだから。昼から観始めて気づけば夕方になってしまっていた。本作の魅力にどハマりし、DVDを購入して繰り返し観るようになった。
何度観ても飽きない。むしろどんどん魅力が増して面白くなって来る。それが名作の証しであるように思えた。それまでの私の映画鑑賞の傾向はと言えば、ゴジラ・シリーズをはじめとした特撮映画やハリウッドのアクション大作ばかり。
名画と呼ばれる作品は観たことは無かった。古臭いし、面白くないだろうと勝手に決めつけていたのだ。ところが本作を観たことで、今の映画に負けない迫力や魅力的な登場人物に魅了されて開眼。今まで避けていたことを深く後悔し、未見のものは新作と一緒であると云うことを痛感した。
それ以来、今尚語り継がれている名作を片っ端から鑑賞し、好きな映画のジャンルの幅が広がるきっかけとなった。東宝特撮映画でお馴染みの俳優が出演していることも、本作に親しみを覚えた理由のひとつかもしれないと思う。ちなみにゴジラ・ファンには黒澤映画を好きな人が多いらしい。
[追記(2018/07/14)]
「午前十時の映画祭9」にて4Kデジタルリマスター版を鑑賞した。初めてのスクリーン鑑賞、感無量だった。観客の年齢層高そうだなと思っていたが、私と同年代くらいの人もちらほらいたし、それより下の高校生もいたことに驚いた。幅広い年齢層に魅力が波及する。名作の証だなぁ⋯
驚いたのは映像も音声もすこぶる鮮明だったことである。DVDで観る際には字幕が欠かせなかったが、セリフがとても聞き取り易かった。是非ともUHDブルーレイで発売して欲しい。
スクリーンでしか体験出来ない迫力があり、ダイナミックな世界観に一層引き込まれた。何度も観ているのが、初めて真の「七人の侍」を観た心地がしている。やはり映画は映画館で観てこそのものであると、改めて教えられたような気がする。
[追記(2025/10/30)]
「午前十時の映画祭15」にて、新4Kリマスター版を鑑賞した。以前の4Kデジタルリマスター版とのはっきりした違いは分からなかったが、若干、左卜全演じる与平のセリフが聴き取り易くなっていた気がする(左卜全のセリフは役柄もあってゴニョゴニョと聴き取りにくい。それが聴き取り易くなっているかどうかが、レーザーディスク、DVD、旧4Kデジタルリマスター版と観て来て、リマスターの度合いを比べる際の個人的な指標になっている)。
[鑑賞記録]
2011/07/29:レーザーディスク
2012/??/??:DVD
2013/??/??:DVD
2018/07/14:TOHOシネマズ西宮OS(4K)
2019/07/22:DVD(ディスク1)
2019/07/23:DVD(ディスク2)
2020/02/08:TOHOシネマズなんば(4K)
2024/10/29:UHD Blu-ray
2025/10/30:TOHOシネマズ西宮OS(新4K)
*修正(2025/10/30)
共感ありがとうごさいます。そこまでDVDやレーザーディスクを観ておられるのならシナリオも一度、読まれてはいかがですか。当然ながら聞き取りにくい百姓たちのセリフも分かります。「全集黒澤明」の第4巻に掲載されていたと思います。大体の図書館にはあります。
りあのさん
コメントありがとうございます。
DVDだと本当に字幕必須です。特に左卜全さんのセリフが聞き取りにくいのです⋯。以前の4K版では多少改善されていましたがまだ聞き取りにくい個所がありました。今回の新4K版でどこまで改善しているのか、個人的な注目ポイントです!
トミーさん
コメントありがとうございます。
高い人気の作品ですものね!
土屋嘉男さんは「地球防衛軍」のミステリアンも演じておられますし、日本を代表する宇宙人役俳優かもしれません。
共感ありがとうございます。
すごい回数の鑑賞記録ですね。
1回観ただけですごく疲れました。内容はもちろん面白くて時間が経つのは早かったです。
しかし、三船敏郎含め農民たちの言葉は聴き取りにくかった。字幕あれば良いのに、と思ってました。
共感ありがとうございます。
前回はやはり“午前十時”でしたが、満席で翌日になりビックリしました。
利助にマタンゴ生えるぞ・・と観ていたら、X星人の間違いでした。
私は30年ほど前に、サンフランシスコのカストロ劇場という当時は名画座になっていた歴史ある大きな映画館で「七人の侍」を観ました。ロビーで長髪・髭・眼鏡のアメリカ人たちが興奮して話してるのを見て、あの時ほど日本人であることを誇らしく思ったことはありません。
地蔵菩薩🙏さんへ。
それほど立派なもんじゃありません(笑)
お褒めいただき大変光栄です。ありがとうございます。
私のレビューでその映画を観たいと思って下さったのなら、それ以上に嬉しいことはありません。
syu32氏🙇そりゃ、これだけ熱く語るレビュー書く人が、確認済みに確定ですよね(笑)😅…「ゴジラ」の次に「七人の侍」DVDに手を伸ばしてますが…私も午前十時行きますわ😅
それにしてもsyu32氏のレビュー!圧倒的に素晴らしい映画愛!🙏
「観た人自身の個性や、背景、精神状態、時代、状況、そのフィルターを通して、その作品の良さを語り、すぐにでも観たくなる様にさせる」…【映画評論家の条件】満たしてますやん(笑)
地蔵菩薩🙏さん、コメントありがとうございます。
素敵な想い出ですね。私もこの映画大好きで、「荒野の七人」も好きです。
「午前十時の映画祭10」でのリバイバルも観に行こうと思っています。
侍探し中の通行人の方々、確認済みでございます(笑)
syu32氏🙇本作も父親に連れて行ってもらいました。テレビで「荒野の七人」見てマックイーンにきゃあきゃあ言う私を…本作を知る父は、何回目かのリバイバルに連れて行きました。現在のTOHO シネマズ梅田が、北野劇場+梅田スカラ座だった頃です。途中休憩入る映画初めてで…でも寝たりしなかったなぁ~あと…ご存知かもですが、農民が侍探し中、町を歩く浪人で、仲代達矢、宇津井健、加藤武が、確認出来ますね🙏







