劇場公開日 1954年4月26日

「世界のミフネ」七人の侍 オレさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5世界のミフネ

2017年2月22日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

笑える

悲しい

時は戦国。
野武士となり盗賊と化した元武士たちが百姓たちの村を襲うことが頻発していた時代。
村には金も食料も無く、怯えることしか能のない百姓たちはうろたえるばかり。
そこで立ち上がった村の若者が村の長老に相談し、武士を雇い代わりに戦ってもらおうという案に至る。
そして紆余曲折あり集まった七人の侍。
迎え撃つは野伏せり40騎余り。
無謀な上に名誉も報奨も無しの戦いに命を、魂をかけて挑んだ七人の侍たちを描いた邦画の金字塔的作品。

邦画のモノクロは何気に初めて。
何よりも上映時間3時間28分という過去最長の作品でなかなか手が出せなかったがミーハーのためマグニフィセントセブンのため鑑賞笑。

野伏せりを退治する報酬としてその間食料に不自由しないが金類の報酬は無し。
相当な悪条件ながらも百姓たちに泣きつかれ、同情ながらにも依頼を引き受けた島田勘兵衛を中心に、弟子入り志願の良いとこの坊ちゃん勝四郎、人柄に惚れ込んだという五郎兵衛、家臣の七郎次、僕の友達そっくり平八、渋み溢れる凄腕侍久蔵、そして自由奔放縦横無尽傍若無人な型破りな侍菊千代の7人が集結する前半。

村へ着いた当初、侍たちの雰囲気に呑まれ姿を現すことすらためらっていた百姓たちだが菊千代の機転(奇策?笑)を利かした騒動で徐々に打ち解けていき、来たる野伏せり対策として村の周囲に防衛戦を築いたり、侍たちだけではなく百姓たちにも武器を持たせ訓練をさせ戦力を整えたりと百姓たちと侍たちの交流を描いた中盤。

vs40騎超の野伏せりついに開戦。
様々な策を講じて快進撃を続ける一方で一人一人と倒れていく仲間たち。自らの勝手な振る舞いで負った代償を悔やむ菊千代らを筆頭に3度目に渡る野伏せりとの激突を描いた終盤。

各1時間は超えるであろう3部それぞれがリアルにユーモラスに表情豊かに描かれているためかなり集中して見れる。尺の長い映画ってのは話がややこしくなっていて途中でダレがちだがこの作品は侍百姓の身分問わずいろんな人間が交流している様子を要所要所に差し込んでくるため、本筋を見失わない上におまけのような人間たちの交流が面白いし微笑ましくもある。

その交流の中心になるのが菊千代。
登場の時点で破天荒だったわけだがただ破天荒なだけでなく、百姓の出身である経緯からヘコヘコとしている百姓たちにイライラする一方で、落ち武者狩りを非難する6人たちの空気に耐え兼ねて涙ながらに百姓のズルさを否定しつつ肯定したい気持ちを吐露したりと非常に人間的な一面を見せる。
最強の腕っぷしで次々と野伏せりたちを倒して行く鬼のような姿を見せる一方でぶっきらぼうだが情に厚く、百姓であれ侍仲間であれ仲間が死んだとあれば思い切り塞ぎ込むという繊細な一面も覗かせる。
つまりはとてつもなく主人公が似合う人物。
まさに王道の主人公像であり、時代を考えるとこの王道の祖と言ってもいいかもしれないキャラクター。
あとすごいプリ尻笑。
あの胸をかきむしる仕草いろんな人がマネしてると思うなぁ。
勘兵衛の腕に惚れ込んで弟子にしてもらおうと思ったけど勝四郎に先を越されてしまってとりあえず一行について行くことにしたみたいな裏設定すげぇかわいくて好き笑。

そのほかの侍も各々非常に魅力的。
久蔵の渋さと勝四郎を思いやる意外な一面ある的な描写、種子島奪いに単身敵陣に突っ込んで翌朝平気な様子で種子島奪って帰ってくる現代の映画なら死亡フラグであろう演習をあっさりと折る強さに惚れる笑。
勘兵衛のどっしり構えた余裕の振る舞い、最後の戦いを前にして勝四郎に対してお前は昨夜から大人だとイジるユーモア!あれは笑った!
「この飯、おろそかには食わんぞ」は映画界の名言にしていいクラスのセリフだった!
平八は死んでほしくなかったなぁ友達そっくりだったなぁ。。

否定のしようのない傑作なのは間違いないがラストのあのリアルな感じはちょっと辛かったなぁ。
共に命を懸けて戦った侍たちを労って埋葬したんだろうってのはなんとなく伝わってくるけどその描写無しに墓を横目にドッコイチャンチャンコーラヤッ!!だもんなぁ。
あのリアルな感じが良いとこなのかもだけどちょっと複雑な気分だったなぁ。
とはいえすごい面白かったのは間違いなかった!邦画のクラシック映画もこれを機に見ていこうかな!

オレ