「愛のさすらい・・・片割れを失くして、」シェルタリング・スカイ 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
愛のさすらい・・・片割れを失くして、
映像がスクリーン映し出される。
ジャズのフルオーケストラが洗練されて格好良いサウンドだ。
{この冒頭音楽は坂本龍一なのだろうか?)
そして映像・・・ニューヨークの街や人がコラージュして
交錯する、はっとする程美しい。
ベルナルド・ベルトリッチの映像作家としての実力を
見せつけられる。
北アフリカの港。
ポートとキットの夫妻は船から既に降りている。
大荷物・・・大きなトランクが5個以上。
彼らは荷物を決して運ばない。
船旅は衣装を取っ替え引っ換えて、パーティー三昧だったのか?
でもこれからはサハラ砂漠の縦断。
美味しいコーヒーとも美味しいクロワッサンともオサラバだ。
結婚10年のポートとキットは船を降りて、
やっと個室に別々に眠れるようになる。
若くて金持ちでハンサムなタナーが同行している。
三角関係はある意味でタナーを緩衝帯にしている。
しかしバスや汽車を乗り継いで奥地へ行くと、不味い食事、
ハエの大量発生、不衛生と快適さはどんどん失われていく。
そしてポートが発熱した。
疫病が流行っているのだ。
ここからはタナーを遠ざけたポートとキットのふたりきり。
ボートが発病すると、彼の支えなしのキットは、
枯れ葉のように心もとなく所在無げで不安に脅かされる。
ポートの傘、
ポートの傘の中だからこそあった平穏。
外人部隊の軍医が診てくれる。
長い苦しみの後にポートはアフリカ大陸で客死する。
サハラ砂漠、
チュニジア、シリア、リビア、モロッコなど多くの国で
ロケをした映像は美しい。
アフリカ人、砂漠の民、駱駝、赤土の砂漠、
青い空、アフリカの民族音楽、
そしてキットはポートの死に向き合えずに、
駱駝の隊列に紛れて、行動を共にする。
糸の切れた凧、
精神の均衡は失われる。
もともと自己を持たなかったキットはさらに自分を見失う。
大使館に保護されても、カフェを見ると、ポートの面影を見たように
カフェに入っていく。
もちろんポートは、もう居ない。
いま東京・名古屋・大阪でリバイバル上映中らしいですね。
僕もこれは映画館で観たかった一本です。
期せずして「アラビアのロレンス」と「シェルタリング・スカイ」がかかっている現在。