劇場公開日 2000年11月18日

クロコダイルの涙 : 映画評論・批評

2000年11月1日更新

2000年11月18日よりシネクイントほかにてロードショー

その美貌と共に演技者ジュード・ロウの魅力に溢れた一本

吸血鬼は難しい立場の生きものだ。永遠の命を持つことは、頑張っても百歳あたりが寿命の人間界では有り得ない驚異的な生命力であるから、吸血鬼=怪物という立場になる。けれど長い時代を生きる彼らの知識量は歴史百科事典級であるから、知恵・理性・人間関係・生活様式において究極のバランス感覚を持つスペシャリストという考え方も出来る。そして吸血鬼の存在をなによりも際立たせるのが“愛”についての考え方だ。常に達観し激情を発しない吸血鬼の唯一の弱点としての愛。永遠の命を継続させるために自分を愛してくれる女(男)性の血が必要な彼らは、愛への飢餓感から逃れられない。本物の愛を得たとき、愛を餌食にしなければならず、愛と命を同時に獲ることが出来ない運命の存在。「クロコダイルの涙」は、そんな吸血鬼伝説の伝承や思想をたおやかに内包した、血の色に滲んだ涙の味がする、気高く奇妙で、切なくて孤独な想いの詰まった映画だ。愛が《結晶》という形で具現化されるアイディアが素晴らしい。愛・生・死を三位一体にした、さ迷い人の浮遊感に溢れる映画でもある。そしてなによりも吸血鬼の孤高な魂をジュード・ロウが完璧に演り遂げている。

(大林千茱萸)

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