劇場公開日 2002年12月7日

CQ : 映画評論・批評

2002年11月1日更新

2002年12月7日よりシネセゾン渋谷ほかにてロードショー

60年代マニアの映画。でもまだ「学習」の域?

とにかく60年代マニアの映画である。劇中、大きな比重を占める映画内映画「ドラゴンフライ」は、「バーバレラ」+「唇からナイフ」+「華麗なる殺人」(ちなみにヒーローはチェ・ゲバラ)。ついでに音楽まで「バーバレラ」そっくり。ローマのシークェンスはフェリーニの「甘い生活」だ。映画内容にやたらと口を出し、商業的成功に執着する大プロデューサーは、ディノ・デ・ラウレンティスそのものであるとともにゴダールの「軽蔑」におけるミシェル・ピコリを想起させる。また、新人女優好きの“天才監督”(演じるは監督ローマンのいとこのジェイスン・シュワルツマン)は、「反撥」や「吸血鬼」を撮ってた頃のロマン・ポランスキーじみてたりする。

商業映画と芸術映画、虚構と真実がともに成熟し、新たな展開をみせた60年代という時代に監督が憧れているのはよぉく判る。主人公が行き着く個人映画がもろにシネマ・ベリテ風というのも共感あっての結末だろう。私生活を映画と混同し、付き合う女性によって撮る映画の性格まで変わる……というのもヌーベル・バーグの連中にはよくあったことだしね。

でもこちとら日本人だ。あの“渋谷系”ムーブメントで、60年代を世界に先駆けて再評価した僕たちは、とっくの昔にあの時代を咀嚼、吸収、再構成し終わっているのである。元ネタを熟知していると「60年代の学習」の域を出ていないようにみえるのだ。それに、35歳の男がはじめて挑む映画にしてはあまりにも青っぽいんじゃないか?

ま、そこがヌーベル・バーグ・フリークのお坊ちゃま監督らしくて可愛いところではあるんだけどね。

(ミルクマン斉藤)

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