「いつかの未来」猿の惑星 sumichiyoさんの映画レビュー(感想・評価)
いつかの未来
初代、猿の惑星です。数多あるレビューの一文に加わわれば幸いです。
改めて感じたのはやはり完成度ですね。本作は1968年の映画であっても実際のロケーションで撮影しているためか現代の映像技術と遜色ない。それに、建物も動物園のような檻と石造りのセットが主体だけど、未知の惑星と言われれば現代でもしっくりくる。ただ、人と猿の立場が逆転しているだけ。この一点だけでここが未知の惑星だと感じさせているところがすごい。それも全て思い込みによるものなんだけど。そして、あの結末。ここにきて、既知のものを使うのが当然という結論にさえ至る。
撮影に関しても、序盤は岩肌の難所が撮影困難なせいもあってかハイアングルや定点のシーンが多かったけど、それが返って未知の惑星感や孤独感を強めていたり。今では問題になるだろうけど、人間たちの扱われ方もそれだけでインパクトがあった。人間たちが追い立てられるシーン、檻から手を伸ばすシーン、首輪で連行されるシーンなど、動物園を見ているような。エイプたちも暴力的でなく作業的なところが意図してなのかそうでないのか。また、言語を発したテイラーを審問する民主制もあったり、完全に社会が入れ替わってしまっていることを物語るシーンでした。やはり、初代は映像技術に頼れない分、技巧で見せる「映画」と感じますね。対して、リブート版は物語を見せる「映像」となってしまっている。コストや制作時間もあるし、面白いのでいいですけど。
当時、本作が大ヒットした理由も考えてみました。制作された1968年頃は第二次世界大戦から二十年余りが経過し、大戦が過去のもとなりつつあった。人類の傷も癒えたけど、悔い改めるべき後悔も残った。それが原子爆弾の投下だと思います。ここに来て、ようやく自分をも脅かしかねない兵器であると理解してきた頃だと思います。手に余る力を手にした未来、人は結果を見なければ理解できない生き物なので、フィクションと言えど現実味を帯びた本作に一抹の不安を感じたのではないでしょうか。作品もすばらしいですし。
そして、この未来は2024年の現在でもフィクションと言えるのか分からない。今日でもシリーズが続いているのはむしろ現実味を帯びてきているからかもしれません。SF作品はいつかの未来を描く物語、人類に可能性と警鐘を与えてくれているジャンルだと思います。