劇場公開日 2001年2月24日

「サバイバル映画の名を借りた…」キャスト・アウェイ にゃろめさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0サバイバル映画の名を借りた…

2023年3月23日
PCから投稿

冒頭から遭難まで約30分。
そこから約80分サバイバル生活をし、
帰還してからラストまで約30分。
そうです、意外に”サバイバルではない”描写が
長いんです。
つまりこの映画のテーマ、ロバートゼメキスの
メッセージはラスト30分なのです。

チャックはなぜ4年もの間たった一人で
生き延びられたのか。
親友の”ウィルソン”とケリーの写真があったから。
いえ、そうではありません。
(※もちろん”ウィルソン”は助演男優賞ものですが!)

チャックは「フェルミ推定」とPDCAを常に意識しています。
フェルミ推定とは、想像もつかないような問題に対して
なるべく具体的な手掛かりを推定し論理的に考える
思考法で、仕事ができる人には必須の能力です。
”社畜”と揶揄する方もおられますが、
冒頭30分でチャックの”生き残るための能力”を
ちゃんと紹介しています。
飛行機事故の場面でもチャックのその能力が表現されています。
海への不時着を見越して、救命ボートは絶対離さない。
周囲をよく観察し、ネットに体を巻き付け揺れや衝撃に
対応している。何も考えずに歩き出し、頭を血だらけにする
パイロットとは違います。
しかもただの計算高いヤツではなく、愛する人にもらった
大事な時計を救命胴衣よりも優先する人間らしさも
兼ね備えています。

無人島でも同様です。
まず考え、実践してみてダメだったところを修正し、
試行錯誤しながら改善していくPDCA。
自殺にまで実験を試みる思慮深さ!
脱出するためのいかだ作りには〇〇本の木材と
〇〇メートルのロープ。1日〇〇メートル作れるから…
まさにフェルミ推定が身についていたからこそ
出来上がった脱出船です。
もしバレーボールが漂着してなくても、
おそらく彼ならヤシの実に顔を書いて
”ココ”とでも名付け、話し相手にしたでしょう。

本当の絶望は帰還してからやってきます。
無人島では常にケリーとウィルソンが
いてくれましたが、今は本当の孤独。
セレモニーでもパーティでも彼の目はうつろ。
もちろん何もかも捨ててケリーを連れ去る
なんてことはしません。
新たな相棒”ウィルソン”を助手席に乗せ、
クロスロードでじっくり考えます。
どちらに進むべきかを。
ただ、息をすることだけを考えて。

さて、問題です。
人は一生のうち、何回呼吸するでしょうか?

にゃろめ