「【稀代の奇人作家、T・カポーティが一家惨殺事件に興味を持ち、犯人の一人と交流を持つ中で、自らの著作”冷血”を世に出したい気持ちと死刑執行を望まない気持ちの相克を描いた作品。】」カポーティ NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【稀代の奇人作家、T・カポーティが一家惨殺事件に興味を持ち、犯人の一人と交流を持つ中で、自らの著作”冷血”を世に出したい気持ちと死刑執行を望まない気持ちの相克を描いた作品。】
ー T・カポーティの事はドキュメンタリー映画「トルーマン・カポーティ 真実のテープ」で知り、且つ「冷血」は読んでいた。
映画からは、T・カポーティが複雑極まりない性格であり、”虚の世界”で生きて来た人物という事が分かった。-
■1959年、カンザスの田舎町である4人家族がライフルで惨殺される事件が起きる。
トルーマン・カポーティは新聞記事を読み事件に興味を持ち、死刑判決を受けた被告人2人のうち、ペリー・スミスに接近する。6年に及ぶ取材を経て、カポーティは最高傑作「冷血」を完成させるが、ペリー・スミスとの交流の中、複雑な感情を持つようになっていた。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・トルーマン・カポーティを演じたフィリップ・シーモア・ホフマンの、ドキュメンタリー映画「トルーマン・カポーティ 真実のテープ」で観た本人と似ている。キーの高い粘着性の高い、蛙の様な声の出し方や、ゲイの仕草が絶品である。
・だが、フィリップ・シーモア・ホフマンは、只の物真似をしているわけではない。事件を知るために年代的な事もあるだろうが、犠牲者の棺桶に近づき蓋を開け、撃たれた頭を覆う包帯をじっと見る表情。
その後、彼は朗読会にてその様を満員の聴衆の前で語るのである。
・又、カポーティとペリー・スミスとの6年に亘る交流も見所である。最初は事件の真相に近づくために、だが、カポーティはペリー・スミスと語り合う中で”自分と同じ、家族に捨てられた男”と認識していくのである。
ここで、カポーティが相方ネル(キャサリン・キーナー)に言った有名な言葉が、フィリップ・シーモア・ホフマンの口から発せられるのである。
”僕は表門から出て来て、彼は裏門から出て来た。”
一方で、カポーティは、ペリー・スミスには「冷血」は書いていないと嘘をついているのである。
・カポーティはペリー・スミスのために有名な弁護士を雇い、死刑執行を遅らせていくが、その時は来て・・。ペリー・スミスからの度重なる電話により、彼は死刑執行直前のペリー・スミスと話しをし、彼が絞首刑にされる所を見るのである。
そして、その後彼は新たなる“完成作品”を発表できなくなり、奇行が目立つようになりアルコール中毒で59歳で生命を終えるのである。(ここら辺は今作では描かれない。)
<今作は、稀代の奇人作家、T・カポーティが一家惨殺事件に興味を持ち、犯人の一人と交流を持つ中で、自らの著作”冷血”を世に出したい気持ちと死刑執行を望まない気持ちの相克を描いた作品なのである。>