ベルヴィル・ランデブー : 映画評論・批評
2004年12月1日更新
2021年7月9日よりヒューマントラストシネマ渋谷ほかにてロードショー
ハリウッドのCGアニメがプラスチックな量産品に見えてくる
「やさしい嘘」「ハウルの動く城」と、おばあちゃんの活躍が目立つ昨今、極めつけがこの「ベルヴィル・ランデブー」だ。ただし、このアニメのおばあちゃんと三つ子シスターズは一筋縄ではいかない。強烈なスウィングで「シワシワのヨレヨレでいたい!」なんて浮かれ騒いでいるのだから。
オスカー長編アニメ部門で「ファインディング・ニモ」と最優秀賞を競った本作、ニモ父さんが大都会シドニーにニモを探しに行けば、おばあちゃんは架空都市「ベルヴィル」に孫を探しに行く。その間、レコード、自転車、汽車、車、犬と、画面ではありとあらゆる動体がにぎやかに運動するが、台詞はほとんどない。バンドデシネの作家でもある監督シルヴァン・ショメの「サイレント活劇」の試みだ。レトロでシュール、純真で凶暴。フライシャー兄弟からジャンゴ・ラインハルト、ジャック・タチまで、好きなもの全部ぶち込んで「トゥンブクトゥでは死にたくない!」なんて歌い踊る。子供から大人まで楽しめるというのがアニメの定番とすれば、子供にはわかるまいというか、そんな区別自体ナンセンスだよ~と笑い飛ばすがごとき、超フレンチな一品。ハリウッドのCGアニメがプラスチックな量産品に見えてくる。
(田畑裕美)