青い夢の女 : 映画評論・批評
2001年12月4日更新
2001年12月22日よりシネスイッチ銀座ほかにてロードショー
映画と精神分析は一卵性双生児
ベネックス8年ぶりの新作は「ベティ・ブルー」(86)以来のコンビとなるジャン・ユーグ・アングラード演じる精神科医が、怪しげな色気プンプンの患者オルガの殺害現場に居合わせたことから泥沼のトラブルに巻きこまれるお話。前半のキメキメのアングラードとシャロン・ストーンばりに過剰なエレーヌ・ド・フジュロール(色っぽいことは認めます)を見ていると、いったいどうなることやら……といった感じなんだけど、あっさり訪れるオルガの死から、がぜん映画は面白くなる。
オルガの死体はヒッチコックの「ハリーの災難」ばりに死んでるくせに存在感を誇示し、生者たちを翻弄。サスペンスを持続させながら、ほとんどドタバタ喜劇でもある……といった余裕の演出ぶりにベネックスの成熟ぶりもうかがえる。
映画と精神分析は19世紀末に起源をもつ一卵性双生児。映画は夢に似ているし、おなじみのカウチに座る精神分析の患者は映画観客に似ている。そんなわけで、欧米の映画理論では精神分析理論がウンザリするほど多用される。だけど最近では映画が精神分析をネタにするケースが増えてきた。この映画なんかその典型で、精神科医がさらに精神科医に治療される場面に象徴されるように、これは精神分析を精神分析する映画といえそう。
(北小路隆志)