こわれゆく女のレビュー・感想・評価
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こわされていく妻
壊れてゆく妻。ジーナ・ローランズの快演が恐ろしい。
こわれゆく女とゆう題名だけど、家庭と亭主によって壊されていっているように見えるが、はっきりと明快な描写がないので観る人によって見え方が変わりそう。
原題の意味は状況下にある女。
他の方のレビューを読んでみると、「精神病によって崩壊していく妻を献身的に支える夫。」と受け取っている人もいた。
私は、仕事が全ての夫が家の家事と子供の世話全てを妻に押し付けて仕事で家にも帰らず無理解に怒鳴り散らす夫によって、孤独感とワンオペ育児に追い詰められて精神が弱っていってしまったように見える。
社会的メンツが1番大事、お前が大事だ愛してると宥めつつ都合が悪くなると怒鳴りつけるし、彼の母親も完全に彼の味方。
冒頭の、今夜は一緒に過ごすと約束していた日の朝には同僚をぞろぞろ連れてきて帰ってきたあげくに、その同僚の1人は「またパスタか」などと言っている。
他人の家に朝から押しかけた上に出す料理にケチつける時点で、は?って感じだし、「また」ってことは結構な頻度で来てるとゆうことで、自分ならこんなことされたら気が狂う。
一方で、冒頭シーン一生懸命帰ろうとする努力が見られたり、ピーター・フォークの温かみのある表情や、子供達を海に連れ出そうと努力してみたり(子供の扱い雑だし、一緒に行った同僚の方に子供が寄っていっているが)な部分で夫も頑張っているように観客に思わせる、ある種中立な描き方をしてるのが今観ても面白かった。
この家庭の状態は、今の日本でも絶賛継続中な気しかしないので、追い詰められた末に
頭がおかしいとレッテルを貼られてしまった人、狭い環境に押し込められ苦しい状況下に置かれている女性に思考を巡らせてしまった。
最後のパーティは、夫が気がおかしくなってしまった妻を認めたくなくって無理矢理に正常であれと動かし、
やっと壊れてしまったと認めて入院させたのを、じゃーん!完全復活!もう心配いりません(体面的に)
を近所、仕事場にアピールする為の会であることにゾッとする。
この映画で1番真実を語っているのはきっと子供達で
「繊細なところがあるけど良いママ」のセリフや。
母を守ろうと、何度も戻ってくる姿によってのみ
メイベルの正しさ示されているように思うと切ない。
それにしても、ジーナ・ローランズが
ほんとにリアルすぎて怖い。彼女がきっちり怖く見えるから、観客の見方を強く揺さぶっているように思う。
インディー映画の父
高崎"女"祭大トリ登場であるw
ジョン・カサベテス この監督を初めて知ったのは内田英治監督「下衆の愛」で、主演である渋川清彦演じる映画監督の部屋に飾っていた外国人の写真
勿論、この人物は誰だかは解らないが、主人公のうだつの上がらない映画監督が理想とする憧れの人なのだと言うことは容易に想像できる演出である
しかし中々カサベテスの作品を観る機会はなく、DVDで観るには、やはり映画作品なのだからスクリーンで観たいという思いも捨てきれず、今に至る
まさか、今流行りのレトロスペクティヴ(映像レストア)で再上演という機会を経ての観賞である 有名な作品は今作品以外にもあるのだが、題名に惹かれての観賞
確かにぶっ飛んだ、今のインディーズ映画の監督達が魅了される程のインパクトの強い内容である
情緒不安が進行する妻、イタリア系移民にステレオタイプ的に描かれる家父長制というソースに塗される夫、そして次世代を担う未だ幼き子供達 周りのコミューンの多さや、すぐに集まる程のプライバシーの欠如 健康的な職場環境なぞ夢な仕事 そんな下地故に、益々追い詰められる夫婦が、精一杯の理性を振り絞りながらなんとか踏みとどまる関係性をゴリゴリと臼を轢くように演出されるストーリーテリングに心を鷲づかみにされる 少々乱暴なカット割りや心情描写の拙さを吹っ飛ばす程の力強さを荒々しく演じてみせる俳優陣もまた見事である
どんどんと壊れていく妻の演技は、観る者を恐怖のずんどこへと誘う 輪を掛けるように夫のDV的圧力 今の時代ならばもうホラーでしかそのカテゴリは当てはまらないであろう
あれだけしつこいほどのリピートと天丼を繰返しながらの、ラストの呆気ないベッドメイクは、してやられた感満載である このウィットとドライ感、そして地獄が毎日繰り返される日常感、諦観と藻掻く情熱の波状攻撃を、若い映画監督は渇望しているのだと、改めて思い起こさせるきっかけを描いてみせた今作、私も忘れられない一作に加えたいと・・・ どいつ目線なんだ、私は(苦笑
タイトルなし(ネタバレ)
いやー、すごいものを見た。社会学で言う「パッシング」を扱った映画がとても好みなので(高畑勲『かぐや姫の物語』とか)、これも心打たれるというか、とても好きだった。
狂気という箱に入れられたメイベル(と子どもたち)だけがまともだよね??あとはみんなちょっとずつ変。メイベルのお母さんはまだましか。自分を尊重されないものが、自分の尊厳を守ろうとするときに出る叫びが、世間では“狂気”とされる。ドアに貼られた“PRIVATE”の札、アレが最後の砦と言うか、まさに心を守る御札だったんだろう。
メイベルが挙げた“5つの大事なもの”がそのまま、自分を殺す呪いになっている。周囲が掛けた呪いを必死に繰り返すうちに自分を縛り上げてしまった。
「(私のことを)バカだと思ってる」というメイベルの言葉(字幕そのままではないかも)も忘れられない。元々明るくて陽気だったのかもしれないけど、それが周囲から求められる枷でもあったよね、きっと。退院して夫がメイベルに繰り返し言わせようとした言葉があれだもの。強要される“自分らしさ”ほど強い呪縛もなかろう。
ある家族の形
病名ははっきり出てこないけど、躁鬱かボーダーかと思われる妻と、その家族の物語。
とにかくジーナ・ローランズの演技がすごすぎる。
表情ひとつ、指の動きひとつであそこまで表現できるのか。
そして、その妻を愛しながらも激しい言葉と態度もぶつけてしまう夫をピーター・フォークが演じる。
妻を深く愛しているのは伝わってくるけど、支えようとしつつも引きずられる故にああいう言動になるのか、途中から、妻が壊れてるのか夫が壊れてるのかわからなくなってくる。
そんな、はたから見たら危険すぎるバランスの家族を成り立たせ、救っているのは子供たちなんだろうな。
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