劇場公開日 2002年8月24日

ウインドトーカーズ : インタビュー

2002年8月27日更新

しばらく続いた戦争映画ブームの中、いよいよジョン・ウー監督作が登場。ウー監督得意のスローモーションもたっぷり、鳩ではないが鳥類は飛ぶ。そして、物語はナバホ族の兵士とその警護を命じられたベテラン兵の人間ドラマ。監督とナバホの兵士を演じたアダム・ビーチが、撮影現場の状況を語ってくれた。

ジョン・ウー監督&アダム・ビーチ インタビュー

ジョン・ウー監督の現場では俳優たちがシェル・ショック状態に?!

第2次世界大戦中、日本軍に暗号をことごとく解読されたため、米軍は侵攻できずに手をこまねいていた。そこで42年に開発されたのが、ネイティブ・アメリカンのナバホ族の言語をもとにした暗号である。ナバホ語を応用して作られた「最強の暗号」は、その後、一度も解読されることはなく、のちに米軍に勝利をもたらすカギとなった。ジョン・ウー監督の最新作「ウインドトーカーズ」は、この知られざる事実を下敷きにしている。

ジョン・ウー監督(左)とアダム・ビーチ
ジョン・ウー監督(左)とアダム・ビーチ

アダム「はじめてその話を聞かされたときは、心の底から感激したよ。アメリカ史において、ナバホ族の人たちがそこまで重要な役割を果たしていたとはまるで知らなかったからね」

「ウインドトーカーズ」は、ナバホ族の通信兵ベンと、彼の護衛を担当する海兵隊員ジョーとの関係を軸に展開する。ジョー役には、もはやジョン・ウー映画に欠かせない存在となったニコラス・ケイジがほぼ自動的に決まっていたが、主役のベン役探しは困難を極めた。結局「スモーク・シグナル」のアダム・ビーチに落ち着くまで、ジョン・ウー監督は400人以上を面接したという。

ジョン「アメリカ映画の西部劇に出てくるネイティブ・アメリカンは、きまって無表情で非人間的に描かれているよね。でも、じっさい彼らに接しみると、温かみがあって、とてもユーモラスなんだ。だから、この映画では、彼らの本当の姿をスクリーンに投影させたかったんだよ。とくに主役のベンには、イノセントでピュアな魅力のある役者を捜していた。オーディションでアダムに会った瞬間、彼しかいないとすぐにわかったよ」

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これまで小規模の映画にしか出演したことがないアダム・ビーチにとっては、まさに大抜擢である。

アダム「正直、圧倒されたよ。こんなにも影響力のあるメディアで、ナバホ族を代表して出演するんだからね。責任重大だけど、同時に、とてつもないほど名誉なことだよ」

一通りまじめな返答をしたあと、バーチは若者らしい笑顔を見せて続ける。

アダム「まさか、自分の人生にこんなことが起こるなんて夢にも思ってなかったよ。ジョン・ウーの映画で、ニック(ニコラス・ケイジ)と共演させてもらえるなんて。これ以上クールなことなんて、想像もつかないよ!」

興奮もつかの間、「ウインドトーカーズ」の撮影が開始したとたん、バーチはたちまちノイローゼ状態に追い込まれてしまった。

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アダム「こんな巨大なスケールの撮影を体験したことがなかったんだ。250発もの爆薬が同時に爆発して、何百人ものエキストラ達がいっせいに突進して。目の前では、人がバタバタと倒れて、叫び声と悲鳴と銃声が響き渡って。目の前にいるニックに必至についていこうとするんだけど、彼のほうはとっくに狂ったモードに入っちゃってるし。そんなカオスのなかにいたら3日で感覚が麻痺して、自分の感情をコントロールできなくなってしまったんだ。ほら、ベトナム戦争の退役軍人とかで、頭がおかしくなってしまった人がいるけれど、ぼくも一時的にああいう状態になっちゃてたんだ」

主演俳優がShell Shock(戦争神経症)に陥るほど、「ウインドトーカーズ」の撮影現場は戦場そのものだった。リアルさを追求するウー監督は、いったん「アクション!」と言ったら、シーンの途中でカメラを止めなかった。俳優はひたすら兵士として戦い、ウー監督はその動きを11台のカメラで追う。まさにドキュメンタリーさながらの撮影方法だったという。

ジョン「この映画では、とにかく反戦のメッセージを送りたかった。だからこそ、リアルな描写を心がけたんだ。戦争に勝者なんていない。この映画を見て、戦争の愚かさ、友情の尊さをわかってくれたら嬉しいよ」

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