アンブレイカブル : 映画評論・批評
2001年1月15日更新
2001年2月10日より丸の内ルーブルほか全国松竹・東急系にてロードショー
「シックス・センス」コンビの新作。超人は第六感を超えるか?
「シックス・センス」の監督、主演コンビの最新作に観客が期待するものは当然、“泣ける驚き”と“衝撃のラスト”だろう。その意味では前作のようなわかりやすく感情を揺さぶる要素は薄く、失望する人も多いだろう。
だが、それこそ鬼才シャマランの狙いでもある。彼はあえてストイックな演出で泣きや驚きのカタルシスを薄くし、一見期待を裏切るようでいて、ただ感情の表面をなぞるだけではなく、心の内から深くえぐってくる前作よりも遥かに高い次元での驚きと感動に挑戦、それを成功させている。だからかなり地味だし、分かりやすさを求める向きからは嫌われる一方、逆に“わかる人”にとっては見応えと味わいのある完成度の高い作品として、前作以上の人気を集めてカルト化も必至。このジャンルの異色作中の異色作として間違いなく後世に残る作品である。
一言でいえば、これは混迷の時代に問う救世主物語であり、社会で孤立する傷つきやすい現代人の孤独な魂の彷徨を描く切ない寓話。込められた勧善懲悪のメッセージは深く、重く、志も高い。
シャマランは戦略的に賛否両論を狙ったこの作品で、彼がヒットメイカーではなくあくまでも映画作家であることを世界にアピールしたかったのかもしれない。
(江戸木純)