劇場公開日 2001年4月28日

トラフィック : インタビュー

2001年4月2日更新

続けて、この群像劇の中でも主演を務めたマイケル・ダグラスのインタビューをお届けする。(聞き手:小西未来

マイケル・ダグラス インタビュー

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マイケル・ダグラスほど好感度の低いトップ俳優もいないんじゃないだろうか。「ウォール街」での金の亡者や、「危険な情事」や「氷の微笑」でのスケベ男、または「ブラック・レイン」や「フォーリング・ダウン」のマッチョ男と、彼が演じた役柄はどれも友達になりたくないものばかり。演技にすぎないとわかっていても、きっと本人もあんなヤツなんじゃないかと思わずにはいられなかった。私生活でのプレイボーイぶりや、「おれはセックス中毒」という告白──まったく、都合のいい病気である──も、その憶測を裏付けていた。だから、たとえ「アメリカン・プレジデント」で高潔な大統領を演じたところで、ジョークにしか見えなかったのである。

しかし、ゼダ=ジョーンズと付き合い始めてからのマイケルは何かが違うのだ。佳作「ワンダー・ボーイズ」では、喜々としてピンクのバスローブをまとってダメ作家を熱演し、ソダーバーグ監督の「トラフィック」は、規模の小さいインディペンデント映画で、しかも脇役の1人にすぎないのに出演をオーケーした。しかし、当の本人はマイケル変化説を否定する。

「私はリスクを冒すことでキャリアを築き上げてきたんだ。これまで自分が関わった作品で大成功を収めたものは、大抵ものすごくリスキーな作品だったんだよ。たとえば、自分がプロデュースした『カッコーの巣の上で』や『チャイナ・シンドローム』、それから『ロマンシング・ストーン』や『危険な情事』もね」

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たしかにマイケル・ダグラスはこれまでも、野心作にチャレンジしてきている。とくに監督を選ぶ目は確かで、これまで自分のプロデュース作ではミロシュ・フォアマン(「カッコーの巣の上で」)やロバート・ゼメキス(「ロマンシング・ストーン/秘宝の谷」)、ジョン・ウー(「フェイス/オフ)などを起用してきた。そんな彼から見て、「トラフィック」のソダーバーグ監督はどう映ったのか。

「スティーブンの魅力は、なんといっても撮影のスピードが早いことだね。テンポよく撮影して、1日の撮影はあっという間に終わってしまう。これは、彼が自信に満ちているからだと思うんだ。彼の場合、自信がない監督がよくやるように、尊大に振る舞ったりする必要がまったくないんだ。いつも物静かで、出しゃばらない。注目がすべて俳優に集まるように振る舞ってくれる。でも、最終的には、彼がぜんぶの注目を集めてしまうわけだけどね(笑)」

マイケル・ダグラスが「トラフィック」で演じる役は、たとえば「マグノリア」でトム・クルーズが演じたキャラクターのように、見せ場があるわけでない。しかし、マイケルはそのことが分かっていても引き受けた。

「私はいい映画に関わりたいだけなんだ。自分の演じる役が魅力的かそうじゃないかなんてことはあまり関係がないよ」

とつぜん魅力的な俳優となったマイケル・ダグラスだが、彼の言うように、ぼくらが見過ごしていただけなのだろうか。インタビューが終わると、彼はどこかに電話をかけた。「まだ帰れそうにないんだよ、ハニー」

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