ザ・リング : 映画評論・批評
2002年11月1日更新
2002年11月2日より日比谷映画ほか全国東宝洋画系にてロードショー
ネタバレ注意!ハリウッド版はここが違う!
ハリウッド版は、日本版の優れた恐怖描写を踏襲しつつ、都市伝説を強調し、アメリカ的でより現代的なホラーに仕上げている。
冒頭、少女らにあふれる電波の影響を語らせ、レイチェルの元夫がビデオを見る際には、高層アパートのほとんどの部屋でテレビがつけられている状況を映す。こうして、ビデオを介した呪いが、日常的に、静かに伝播していく可能性を生々しく暗示しているのだ。
さらに、レイチェルがビデオ映像を調べていると、映っていたハエがブラウン管からふと飛び出す。仮想現実が現実を侵食する現代的な描写で底知れぬ怖さを醸し出すと同時に、クライマックスへの鮮やかな伏線としている。
一方、牧場の馬の変死からサマラを導く展開は、いかにもアメリカ的。フェリーで馬が暴れだすエピソードも、真相へと連なり、効果的。ほぼひとりで運命に立ち向かうヒロインの強さもアメリカ的で、日本版とは違うラストの行動も、より微妙な余韻を残している。
そのほか、リック・ベイカーが造形した悪夢の死体を一瞬見せたり、光の輪や水、燃える木といったイメージを巧みに使い、サブリミナル的に脳を刺激。携帯やデジカメなどもうまく活用し、新たな恐怖を味あわせてくれるのだ。
(山口直樹)