タブロイド : インタビュー
カンヌやサンダンスで高い評価を受けたメキシコのサスペンス映画「タブロイド」が日本公開を迎える。本作のPRのために来日した監督に話を聞いた。(聞き手:わたなべりんたろう)
セバスチャン・コルデロ監督インタビュー
「取材する側とされる側が似ていると面白いと思ったんです」
「シティ・オブ・ゴッド」や「モーターサイクル・ダイアリーズ」など優秀な作品を次々と送り出しているラテンアメリカ映画界から、新たな俊英監督の登場である。セバスチャン・コルデロ監督の「タブロイド」は、人間のモラルの危うさを衝撃的かつ鮮やかに提示することに成功し、「羊たちの沈黙」などの系譜に連なるシリアルキラーを扱った作品ながら、これまでの同種の作品とは全く違う感触を味あわせてくれるのだ。コルデロ監督の書いた脚本に魅了されたアルフォンソ・キュアロン(「天国の口、終りの楽園。」「ハリー・ポッターとアズガバンの囚人」)が製作に参加。この映画で世界的に認められたコルデロ監督はハリウッド進出して、次回作はハリソン・フォード主演の「Manhunt」である。
――本作を作ろうと思ったきっかけは?
「主人公のようにレポーターとして長く活動していると、人生や物事に対してシニカルになっていきます。このことは法医学者と話していて、死体と長く接しすぎると人生や物事に対してシニカルになっていくことを聞き、思いついたものです。彼らはモラルなどに対して違う見方をしているんです。また、主人公(取材する側)と取材される側が似たような人間だったら興味深いだろうと思ったこともきっかけです」
――主演のジョン・レグイザモはどうでしたか?
「レポーターのマノロ役は心理的葛藤に悩む役ですが、見事に演じてくれました。彼は『カリートの道』や『ムーラン・ルージュ』など多くの素晴らしい作品で印象的な演技をしていますが、私は『サマー・オブ・サム』の彼の演技が好きですね。コロンビア生まれで4歳でニューヨークに移住した彼が、十分なスペイン語を話せるかが不安でしたが、会ってみたらスペイン語を話せることが分かったうえに、コロンビア訛りとニューヨーク訛りがうまくミックスされていて、マイアミのテレビ局のレポーターとして、マイアミ特有のハイブリッドなラテン文化にぴったりでしたので、すぐに彼に決めました」
――次回作となるハリソン・フォード主演の「Manhunt」についてどう思っていますか?
「とても楽しみにしています。他人が書いた脚本を撮るのは初めてですが、とても良い脚本で興味のある題材だし、挑戦になりますから。“追う者と追われる者の心理”や“モラルの葛藤”という、これまでの私の作品に共通するテーマあります。
ハリソン・フォードは、あのように有名なスターでありながらも、新人俳優のように映画に対するエネルギッシュな姿勢を保っていて、本当に素晴らしいですね。私は『スター・ウォーズ』も『レイダース』も大好きですから、初めて彼に会って声を聞いたとき『ハン・ソロだ。いや、インディ・ジョーンズが目の前にいる!』と嬉しくて混乱しました(笑)。光栄でしたね。彼は飛行機の操縦が趣味なので、この間は小さな飛行機に乗せてくれました。彼と2人きりだったので、墜落してこのまま死んでもいいと思いましたよ(笑)」