「面白かったけど、コメディセンスが日本人には合わないと思う」スーパーサイズ・ミー といぼ:レビューが長い人さんの映画レビュー(感想・評価)
面白かったけど、コメディセンスが日本人には合わないと思う
サンプル数1しかないこの実験が、果たして「マクドナルドの食品に有害性がある」という証明になるのかどうか、甚だ疑問ではあります。どんなものでもそればかり食い過ぎれば栄養が偏るのは当然ですから。
ちなみにですけど、アメリカ・アイオワ州の科学教師であるジョン・シスナ氏も自らを実験台として、三カ月間マクドナルド食品だけを食べてダイエットするという反証実験を行なっています。そこからも、「マクドナルドの食品を食べると肥満になる」は必ずしも正しいとは言い切れないのが分かります。
アメリカ特有のユーモアと皮肉がたっぷりの演出や言葉回しが結構笑えました。ただし、アメリカはウィル・スミスの暴力事件からもわかるように「成功者をボロクソに貶す」ってのがコメディとして成立している国ですので、本作でも世界的成功を収めたマクドナルドを口汚く罵倒するようなシーンが目立ちます。日本人が観ると不快に感じるようなシーンが「笑えるコメディ」として挿入されているので、もしかしたらこれを観ても全く笑えない方もいらっしゃると思います。
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世界一の肥満大国であるアメリカ。アメリカ人で肥満に苦しむティーンエイジャーが、人体に有害な食品を販売しているとして、大企業マクドナルドに訴訟を起こした。この訴訟は「マクドナルドの食品と肥満に因果関係が認められない」として棄却され、マクドナルドは自社商品の安全であると公表した。映画監督のモーガン・スパーロックは自らを実験台として「本当にマクドナルドの食品は有害か」を検証するため、1カ月間1日3食をマクドナルドの食品にする生活を始め、映像として記録することにした。
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私自身はアメリカに行ったことが無いのでよくわかりませんが、「アメリカには肥満が多い」というのは、渡米経験のある知人からよく聞いていました。しかし本作を観て、自分が思っていたよりも遥かに肥満率が高く、それが根深い社会問題となっている現状を体感することができました。そこが非常に良かったと思います。
監督のモーガンが自ら体を張って行なった実験も、「サンプル1で信頼性には欠けるもの」というのが前提ではありますが興味深く鑑賞することができました。
しかしながら、随所に散りばめられたマクドナルド批判に私は顔を顰めます。とにかく、マクドナルドへ対するヘイトがヤバい。ロナルド(ドナルド)に親でも殺されたのかと思うほどにヤバい。多分ここが引っかかってあまり楽しめなかった人もいるんじゃないでしょうか。
私は「どんなものでも食べ過ぎれば太るし健康に悪い」と思っています。健康のためにベジタリアンになった人が、逆に体調を崩してしまって肉も食べるようになったという話も耳にしたことがあります。今回やり玉にされているのはマクドナルドですが、これがケンタッキー・フライドチキンだろうがピザハットだろうが丸亀製麺だろうが、一カ月毎日3食食べ続ければ似たような結果になっていたと思います。
先述の通り、本作を鑑賞したジョン・シスナ氏が3カ月間のマクドナルド生活でダイエットとコレステロール値の改善に成功したという反証実験を行なっていますので、モーガンの実験結果だけでマクドナルドが肥満の原因だと断ずるのはあまりに早計ですね。
実験的なドキュメンタリーとしては楽しめたんですけど、ところどころ引っ掛かる部分がある、惜しい映画だったと思います。ただ、アメリカの大きな社会問題である肥満に対して、多少過激ではありますが警鐘を鳴らす意味のある映画でした。