「シリーズとしても、単体作品としても秀でている。伝説の始まり!」スパイダーマン 桜さんの映画レビュー(感想・評価)
シリーズとしても、単体作品としても秀でている。伝説の始まり!
この作品は、幼い頃から何度も視聴しており、「スパイダーマンNo Way Home」に先駆けて、復習がてら視聴し、ずっと書こうと思っていたので、ついにシリーズ全て書くことにした。
「ヒーロー映画」と聞くと、勧善懲悪で楽しいワーキャー映画だと想定する人が多いだろうが、この映画を見るとその想定を大きく上回るだろう。
この映画に幸せなシーンはほとんどない。
それが本作、本シリーズの魅力なのも間違いないだろう。
主人公ピーター・パーカーは冴えない化学オタクで、6歳の頃から隣に住んでいるMJ(メリー・ジェーン・ワトソン)にずっと片思いし続けているが、クラスの所謂「陽キャでオラオラ系」のフラッシュと恋仲にあるという、何とも気分の悪いスタートから始まる。
鈍臭いピーターは、フラッシュ達に日々虐められている。
好きな人の彼氏に虐められるとは、これまた何て皮肉な話だろう。
そのピーターの親代わりであるベン伯父さんとメイ叔母さんも、ベンが会社をリストラされ、貧しい日々を送っていた。
一方ピーターの親友であるハリーも、所謂親の七光りで、私立のお金持ち学校に通っていたが、環境が合わず退学し、ピーター達の高校に転校してきた。
そのハリーのお父さんであるノーマン・オズボーンも、自社の研究が上手くいかず、アメリカ軍との契約を切られかけている。
ここまで聞いて、なんて暗い物語なんだと思うだろう。
これは本当にヒーロー映画か?と。
そう、これがサム・ライミ監督のスパイダーマンである。
ヒーロー映画とはいえ、現実はとても残酷である。
寧ろピーターは酷い目に合い続ける。
それでも彼はヒーローとして、1人の男として、困難に立ち向かっていくのである。
その様を是非三部作を通して見ていって貰いたい。
とある日、社会科見学にてピーターは新種の蜘蛛に噛まれ、「大いなる力」に目覚める。
初めてこんなに清々しい力を手に入れたものだから、ピーターはすっかり調子に乗ってしまう。
いじめっ子のフラッシュをぶん殴り、ベン伯父さんとの約束をすっぽかして自分の力に酔いしれるようになる。
MJともいい感じになるも、彼女がよく知らん男に車で迎えに来られ、MJの「カッコいいー!」と、誰が聞いてもお世辞であろう言葉に触発されて、怪しげな地下闘技場へ出場し、賞金で車を買ってMJの気を引こうとする。
そんな事をしてもMJは大して喜ばないだろうし、そんな事よりも大切な物があるのは誰が見ても明白だが、高校生でロクに恋愛をしてこなかったピーターに、それは分からない。
ベン伯父さんはピーターの突然の異変に心配になる。
何かしてやれる事はないか。力になれないだろうか。
そして彼はピーターを図書館(正確には地下闘技場)に送った際に心配だと伝えるが、高校生の思春期真っ盛りのピーターには、説教に聞こえてしまい、「父親面するな」と思ってもいない事を言ってしまう。
そんな彼に、ベン伯父さんはピーターの後の人生に必要不可欠な言葉を遺す。
「大いなる力には、大いなる責任が伴う」
ピーターは無事地下闘技場のチャンピオンに勝利するが、約束の金額は貰えなかった。その腹いせに、その後来た強盗を見逃してしまう。その強盗が、彼の愛する伯父を殺害するとも知らずに、、、。
ピーターは撃たれたベン伯父さんに駆け寄り、手を握る。ベン伯父さんは「ピーター、ピーター、、、。」と涙を流しながら手を握り返し、息を引き取る。
せめて酷い事を言ってしまった事を一言でも謝ることが出来れば、どれだけ違っただろうか。
ピーターは決意する。ベン伯父さんに教えられた言葉通り、この街と市民の安全を守るために、スパイダーマンとして生きる事を。
そんな中、ノーマンは自社の研究の人体実験を自らに行い、「グリーンゴブリン」に変貌を遂げてしまっていた。
ウィレムデフォーの二重人格とも言える演技は圧巻の一言。恐ろしく狡猾で、病的な彼の名演技にも注目して頂きたい。
ここからいざ明るくなっていくかと思いきや、MJはいつの間にか親友のハリーと付き合っているし、ノーマンは自分の会社をクビになるし、お互い散々である。
それでもスパイダーマンとしてMJとキスが出来たり、彼女や市民の安全を守れていた。
が、グリーンゴブリンによってその平穏は崩される。
グリーンゴブリンはスパイダーマンにこう言う。
「お前が幾ら市民を守った所で、市民はお前を守りはしないし、それどころかお前を攻撃してくるぞ」と。
その言葉通り、賛辞の声とは別に、スパイダーマンを悪だと罵り、逮捕状まで出てしまう。
どんなに頑張っても報われないピーター。辛い。
ピーターがスパイダーマンだと知ったノーマンは、グリーンゴブリンの真骨頂である、敵の肉体ではなく
精神を蝕もうとし、ピーターの唯一の家族であるメイ叔母さんを襲う。最低で清々しい程に憎いヴィランである。
ただ、ノーマンがMJに暴言を浴びせた事で、ハリーとMJの2人は破局。
その後、この映画で唯一と言ってもいい、幸せなシーンが訪れる。
ピーターはメイ叔母さんの入院する病院で、スパイダーマンの力を借り、MJに想いを伝える。めちゃくちゃいい感じ!
その後すぐにハリーが病室に入ってきた事で気まずくなる訳なのだが。
そして結局、ピーターがMJを好きだという事を知ったノーマンことグリーンゴブリンは、MJを誘拐し、何とも苦しい2択をスパイダーマンに迫る。
愛する人を助けるか、市民、子供達を助けるか。
勿論彼の答えは、「どっちも助ける」だ。
だが、そうも簡単には行かず、2つとも失いそうになる。
絶体絶命!
だが、そこで市民たちがグリーンゴブリンを攻撃し、スパイダーマンを救う。
めちゃくちゃ熱い展開だ。
グリーンゴブリンが言っていた、「市民はお前なんて助けねーぞ」という言葉を完全に払拭し、スパイダーマンは皆を救う事が出来たのだった。
そして最終決戦。
またもやグリーンゴブリンは狡猾な手でスパイダーマンを殺そうとするが、逆に自らのグライダーで自分自身を貫いてしまい、何とか勝利。
ノーマンは最後に、「ハリーには言うな」という言葉を残した。
この言葉がまた、心優しいピーターを苦しめていくのだが、それはまた続編で。
そしてノーマンの葬式でピーターはMJに告白される。
12年間ずっと思い続けていた憧れの女性から、まさかの逆プロポーズ。
MJはこう言う。「今まで色んな人達と付き合ってきたけど違った。昔からずっと私を陰ながら支えてくれていたのは貴方だった。」と。
その告白をピーターは断る。
彼女の事を愛している。本当に愛している。
だからこそ、彼女を危険に晒す訳にはいかない。
どんなに辛い決断だろうか。
やっと振り向いてくれたのに。自分の元へ来てくれたのに。
「大いなる力には、大いなる責任が伴う。」
まさにこの言葉通り、彼は愛する人を守るために、自らを殺したのだった。
この映画は、単なるヒーロー映画には留まらず、そこにある「リアル」をしっかり登場人物達に投影しており、我々もちゃんと感情移入出来るので、いい映画だなと思う。
確かに三部作どれも名作で、全部通して観ると特にスパイダーマン3が素晴らしいのだが、この作品は単体作品としてもかなり面白く、スパイダーマンの誕生と、グリーンゴブリンというヴィランとの対峙を、なんの知識もなく見ていても面白いと思う。
この暗さが癖になれば、この三部作を愛する事間違いなしだろう。
名作ホラー映画を多く作ってきたサム・ライミらしいホラー展開や描写にも要注目だ。
心が痛いシーンが多いが、ピーター同様それと対峙し、是非乗り越えて欲しい。
以上、長文失礼しました。
NandSさん、何故か不具合でNandSさんのアカウントが開けないのでこちらで返信させてもらいます🙏
コメントと共感ありがとうございます!
数あるスパイダーマンの中でも1番ドラマ性が強く、暗く、そして一番好きなシリーズなので、共感とても嬉しいです。
是非とも2,3のレビューも合わせてご覧下さい!
暗さ! 読んでいて、確かにそうだな。と感じました。
MCU版スパイディと違うのはこういうところだったのですね、納得しました。興味深いレビューありがとうございます。