ルールズ・オブ・アトラクション : インタビュー
ロジャー・エイバリー監督インタビュー
「タランティーノとおれはピーナツバターな間柄」
編集部
――あなたの、かつてのパートナーであるタランティーノについてもお聞きしたいのですが。あなたはタランティーノと一緒に「パルプ・フィクション」を執筆したことになっていますけど、実際はもっとたくさん共作しているんですよね。
「『ナチュラル・ボーン・キラーズ』のワンシーンを書いたし、『トゥルー・ロマンス』でも一緒にやったね。あと『レザボア・ドッグス』に関しては、友人としてちょこっとヘルプしてるよ」
――「トゥルー・ロマンス」は、あなたが書いた脚本を下敷きにしているそうですね。
「おれが書いた『オープン・ロード』っていう80ページくらいの脚本をクエンティンに読ませたら、『オーマイゴッド! 最高じゃないか! 120ページにすれば、映画化できるぜ』って勧めてくれた。まあ、その時のおれたちは、ビデオ屋で働く2人の若者で、映画界にはなんのコネもなかったんだけどね(笑)」
――(笑)
「でも、当時のおれは、別の脚本を書いていてエネルギーがなかったから、後は彼に任せたんだ。そしたら、9カ月か10カ月経った頃、電話帳よりも分厚い紙の束に書き直してきた。全部手書きで字は汚い、スペルミスもあるし文章もめちゃくちゃ。おれは、それを1枚1枚解読していったんだけど、読み終わる頃には涙が出てきた。そのくらいの傑作だったんだ。そこには、後のタランティーノ映画――『ナチュラル・ボーン・キラーズ』や、『パルプ・フィクション』、『レザボア・ドッグス』、『ジャッキー・ブラウン』に至るまで全ての要素があった。その書類の束は、彼が持っていた構想を全て吐き出した代物だったんだ。それは、おれが人生で読んだどんな書物よりもパワフルで可能性に満ちていたよ」
――すごいですね。
「でも、天才的なアイディアはいくつもあるけれど、脈絡がなくて、まとまりに欠け、映画にはなってなかった。それで、1年ぐらいかけて2人で物語を再構成していって『トゥルー・ロマンス』という物語を作ったわけ。当時、彼が監督をし、おれがプロデュースをするという話で、おれはあらゆる努力をしたよ。でも、その後ひどい連中と手を組んでしまったために、『トゥルー・ロマンス』の脚本は奪われてしまった。最終的には、トニー・スコットが監督してくれたから幸いだったけどね」
――おふたりの脚本執筆における役割分担ってどんな感じだったんですか?
「『Reese』ってお菓子に似てるんだ。『Reese』はチョコレートとピーナツバターという全く違う物質が裏表で合わさっているけど、いい味になっている。お互いをうまく補って、より良いものへと変化することができるんだ」
――スタイル的にどう違うんですか?
「クエンティンの最大の長所は、ワンシーンのなかで、感情的に相反する要素を同居させてしまうことだ。残酷でショッキングなんだけど、同時にそれが笑えるっていう。彼はそうやって、2つの相反するものを、コインを裏返すように簡単にミックスしていく。おれの場合は、もっとゆっくりと積み上げていく感じだね。雪だるまが転がって、どんどん大きくなって、やがて、それが木や家をなぎ倒し、滑稽なほど巨大化して笑えてくるっていう。で、この2人のテクニックを混ぜると――それはまさに『パルプ・フィクション』でやったことだけど――ものすごくうまく作用するんだ」