ロボッツ : インタビュー
「アイス・エイジ」のブルースカイ・スタジオがおくる最新CGアニメーション大作「ロボッツ」は、色彩豊かなロボットや斬新な造形の建物が数多く登場するが、その世界観を実現する製作スタッフの中に日本人スタッフがいたことは、ほとんど知られていない。カラー・アーティスト、堤大輔氏その人だ。去る6月22日、プロモーションのため帰国した彼に製作の裏話を伺った。
ハリウッドの一線で活躍する日本人スタッフを直撃!
聞き手:編集部
――ブルースカイ・スタジオでどんな仕事をしていたのですか?
「僕は一応、フィルムのクレジットでは『リード・カラー・キー・アーティスト』ということになっています。コンピュータでCGイメージを作っていく人たちのために、ガイドとなるコンセプトのイラストというものを作るのですが、そのアート・ディレクションをやっています。『ロボッツ』に関して言えば、一番最初のまだ、脚本が出来上がっていない時点で、どういう感じのビジュアルスタイルを追求していくかを決定し、デザインしていきました」
――ブルースカイ・スタジオに入った経緯を教えてください。なぜ日本ではなく海外に活躍の場を求めたのでしょうか。
「僕はニューヨークの大学を出て、サンフランシスコにあるゲーム会社で2年間働きました。だけど、ゲームは自分ではやらないので、最終的なプロダクトを自分自身で楽しむことができなかったんです。やってる仕事は今と変わらないんですけどね(笑)。僕は油絵を勉強していたこともあるのですが、ある日、その絵がクリス・ウェッジ監督の目に留まったようで、かなり気に入ってくれまして。それが縁でブルースカイ・スタジオに入れてもらいました」
――作品全体のカラーはロドニーのボディの色でもある青だと思うのですが、いつ頃から決まっていたのですか?
「いろいろ試行錯誤はあったんです。主役のロドニーに関して言えば、赤だったときもあるんです。では、なぜ青になったか。それは、最初にこの話を頂いた時に、監督のクリス・ウェッジのお父さんが持っていたモーターボートのモーターがまさに作品の青だったんですよ。『とにかくこれがロドニーだ』と監督に言われまして。形は普通のモーターなのに(笑)。それをイメージして僕らアーティストがデザインを作っていったんです」
――最も気に入っているシーンは?
「マダム・ガスケットが住む部屋が登場するシーンですね。このシーンはかなり初期に手がけたイラストだったんですが、クリス・ウェッジ監督が凄く気に入ってくれまして、『このままこれでやろう』と言ってくれたんです。イラストに忠実に仕上がっていたので嬉しかったです。あとは、最後の決戦のシーンはかなり力をいれたので自分の中で印象に残っていますね」
――ご自身は日本のアニメ作品やフルCG作品の影響を受けていると思いますか?
「日本のフルCG作品は見たことないのですが、アニメに関してはもちろん、影響を受けていると思います。僕は小さい時から漫画やアニメで育ってきました。特に、宮崎駿さんの作品は世界でナンバーワンだと思ってます。フルCGに関してというよりは、日本は手書きのアニメだと思いますね。CGを取り入れた作品はたくさんあると思うのですが、『ロボッツ』や『トイ・ストーリー』のようなフルCGはあまりないですよね」
――将来、日本の作品を手がけてみたいという気持ちはありますか?
「日本で働きたいという気持ちはもちろんあります。やっぱり日本だからこそ作れるものがすごくあると思うんです。アメリカだからこそ作れるものもあれば、作れないものもありますからね」
――堤さんのように、映画の本場アメリカで活躍したいと思っている日本のクリエイターに向けてアドバイスをお願いします。
「とにかく『失敗してもいい』というくらいの気持ちと度胸で挑戦してほしいと思います。絶対に成功することをやるのではなくて、成功しないくらいのことを成功させるぐらいの気持ちでやって、ダメだったらダメでしょうがないと。僕が言ってもそう簡単には実行できないことは分かるんですが、だからこそ外に出てトライしてほしいですね。英語とか技術の問題ではないと思うんです。日本人の技術は世界に通用するものですから、もっと度胸の部分が大事になりますね」
――次回作について教えてください。
「今、ブルースカイが製作しているのは『アイス・エイジ2』ですが、僕はその次の作品、ドクター・スースという絵本作家の作品が映画化されるので、初期段階のビジュアライズをしています。それが公開されるのは07年くらいになると思いますね。今はこれだけに完全集中しています」