「【”親切にされたら、3人の人にその親切を渡す。”新任の教師の言葉から、善性溢れる幸せが多くの人に拡散する着想をした少年が惹き起こした、小さくとも数々の幸せを描いた作品。】」ペイ・フォワード 可能の王国 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”親切にされたら、3人の人にその親切を渡す。”新任の教師の言葉から、善性溢れる幸せが多くの人に拡散する着想をした少年が惹き起こした、小さくとも数々の幸せを描いた作品。】
ー この作品のベースになった”親切にされたら、3人の人にその親切を渡す。”というトレヴァー少年(ハーレイ・ジョエル・オスメント)が新任の教師シモネット(ケヴィン・スペイシー)の授業中に黒板に書いた着想が素晴しい。
トレヴァー少年が、インタビューで語るように、人間が変わるのは難しいのだけれども、一人一人が勇気を出して”親切にされたら、3人の人にその親切を渡す。”という思想を実行したら、この世は今よりも絶対に良くなると思うからである。ー
■父リッキーは過去に出奔し、アルコール依存症を克服しようと努力する母アーリーン・マッキニー(ヘレン・ハント)とふたりで暮らしている少年トレヴァーは、新任の教師シモネットの授業で”個人の力だけで世界を変える方法を考える”という課題を出される。
彼は一人の人間に親切にされたら三人の人間に同じことをするペイ・フォワードというアイデアを思いつき、実践していくことにする。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・トレヴァーは、さっそくホームレスの男性を家に招き、風呂に入れて上げる。そして、彼から感謝される。
■トレヴァーがそのアイディアを思いついたのが、アルコール依存症だった父が母を殴るのを見て、と言うきっかけが切ないが素晴らしい。
多くの映画では、父の血を引いた息子が同じようになっていく負の連鎖が描かれる事が多いが、この作品は違うからである。
それにしても、ハーレイ・ジョエル・オスメント少年の利発な顔が説得力を増すなあ。
・更にトレヴァーは、母アーリーン・マッキニーとシモネットの様子を見て幸せを広めようとするのだが、シモネットも過去にアルコール依存出会った暴力的な父に反発し、ガソリンを掛けられ火を放たれたという過去が明らかになるシーンはキツイが、彼の顔の火傷の意味が明らかになるシーンであり、作品に深みを与えていると思う。
そして、母アーリーン・マッキニーとシモネットは結ばれるのである。
・更に更にトレヴァーは、母と疎遠になっていた路上生活をする祖母と母との関係性も修復させるのである。
<ラストは切ない。トレヴァーはそれまで観て見ぬふりをしていた苛めっ子たちが一人の男の子が苛められている姿を見て、男の子を助けに苛められっ子たちを止めようとするが、腹をナイフで刺され死んでしまう。
だが、トレヴァ―のTVインタビューを観た多くの人達が、夜にトレヴァーの家の前に花束や蝋燭を持って集まるシーンは、沁みたなあ。
彼らの姿を、今や一緒に暮らすようになった母アーリーン・マッキニーとシモネットは、抱き合いながら観ているのである。
今作は、”親切にされたら、3人の人にその親切を渡す。”と言う考えを思いつき、実行に移した少年とその家族の姿を描いたヒューマン映画なのである。>