「本当に、なんて重たいものを背負った民族なんだろう」ミュンヘン UNEmiさんの映画レビュー(感想・評価)
本当に、なんて重たいものを背負った民族なんだろう
民族全体としての「自分たちの国」を持つことに対する情熱は、私の理解の及ぶ範囲ではない。
あれこそ世代を超えた「悲願」なんだろう。
主人公とアリの不思議な対話の中で、そんなことを考えた。
敵を殺すことで祖国のヒーローになれるとしても、なぜ彼らはそこにそこまでのエネルギーをかけられるのか。
何もかもが信じられず、自分の存在を消された状況で生きることで、混乱をきたした主人公。
祖国よりも、家族の安全と幸せを願った主人公。
彼の思考回路は、民族の存続や、悲願達成を願う文化の中では受け入れられるものではないのかもしれないが、私は彼の考え方のほうが自然に感じられる。
スピルバーグは、911があってこの映画を撮ったらしいが、彼の結論は「こんなことをしていても何の解決にもならないし、永遠に殺し合いは終わらない」ということだろう。
私もそう思う。
そして、自分の夫がこんな仕事をしていなくて本当に良かった。
あんな状態で体を重ねられたら、私はそれを吸収しきれない。
世の中にはきっと、とんでもない仕事をさせられている夫を支えている女性が沢山いるんだろうな……。
ユダヤ系のスピルバーグがこの映画を撮ったのは、シンドラーのリストと同じく、自身のルーツを考えるためもあったのではないだろうか。
コメントする