モンスターズ・インク : インタビュー
なんのかんの言ってやっぱり見れば面白いピクサー作品。その最新作「モンスター・インク」は本年度からアカデミー賞に新設されたアニメーション部門にもちろんノミネート。その魅力の秘訣はどこにあるのか? フィギュア向きキャラの登場作にはちょっとうるさい映画ライター、渡辺麻紀氏が、ピクサーの親玉、今回は製作総指揮にまわった「トイ・ストーリー」シリーズの監督、ジョン・ラセターに直撃インタビュー!(聞き手:渡辺麻紀)
製作総指揮:ジョン・ラセター、製作ウラ話を語る
3D-CGアニメ・スタジオ、ピクサーが語る物語はいつも、面白くって胸がきゅんとする。そしてまた、彼らが生み出したキャラクターは、つい「フィギュアが欲しい!」という衝動に駆られてしまうキュートな連中ばかり。もちろん、この最新作「モンスターズ・インク」も例外ではない。
「私たちがまず考えたのは『トイ・ストーリー』がなぜ、世界的に受け入れられたかということなんだ。その答えは、子供なら誰でも、夜中に自分のおもちゃが勝手に動いているんじゃないかと考えたことがあるからということだった。ならば、ほかにもそんな共通の経験がないかと考え、その答えがこの映画になった。つまり、クローゼットの扉の向こうにはモンスターが潜んでいるんじゃないかという不安だよ」
そう語るジョン・ラセターは「モンスターズ・インク」の製作総指揮を担当。初めての長編「トイ・ストーリー」のときから技術よりなにより、物語の重要性に重きを置いてきた彼とそのスタッフらしいアプローチだ。そんな彼らの出した答えは、子供だけに通用するものではない。かつて子供だった私たち大人にも通用し、心をくすぐってしまうのだ。
「モンスターのデザインには苦労したよ。なぜなら、すでにたくさんのモンスターが存在しているからね。そこで私たちは、子供たちの描いたモンスターをベースに、動物の特徴をプラスさせたんだ」
そうやって生まれたモンスターたちは確かに魅力的だ。が、今回はユニークな彼らに加えてブーという人間の赤ちゃんが登場し、そのかわいらしさはモンスター諸君以上だったりする。
「彼女の声を当てたのはスタッフの2歳半になる娘なんだ。そんな年だからじっとマイクに向かってしゃべるなんてことは出来ないだろ。だから私たちは彼女のあとを追いかけて、その声を録音したんだよ。笑ったり、言葉にならない言葉をしゃべっているのは演技じゃないんだ」
ああ、それで、あのかわいらしさが生まれたんだと納得。モンスターのサリーが彼女を愛してしまう気持ちが痛いほど伝わってくる。そしてまた、そんなモンスターたちが優しい存在であることも。
「この映画を見たあと、子供たちがクローゼットのなかをチェックするという話をたくさん聞いたんだ。彼らは怖がってそうしているんじゃないよ。モンスターのことを友だちのように思い始めて、そこにいないかなあと確かめているんだ」
恐怖が好奇心に代わり、叫び声が笑い声に代わる。まさにこの映画のテーマそのもの。またもピクサーは、われわれの心を優しくしてくれたことになる。
ちなみに、今年から新設されたアカデミーのアニメーション部門に本作はノミネートされた。自信のほどを尋ねてみると「そんなカテゴリーが出来たことだけで興奮しているんだ。特に去年は素晴らしい作品ばかりが公開されたからね」。その素晴らしい作品のひとつがもちろん「モンスターズ・インク」。ラセターには自信アリと感じたのだが、果たして!?