「愛の光景」ラブ・アクチュアリー sankouさんの映画レビュー(感想・評価)
愛の光景
認めたくない人もいるかもしれないが、一番人を悩ませ、苦しめるのは恋愛だと思っている。
片想いに苦しみ、勉強や仕事や趣味に手がつかなくなってしまった経験を持つ人ならば、必ず共感出来るであろうエピソードが散りばめられた秀作だ。
物語はクリスマスの五週間前から始まる。
かつての人気歌手のビリーは自身のヒット曲の焼き直しで復活を狙うが、問題行動ばかりを起こし長年連れ添うマネージャーを困らせている。
犯罪小説家のジェイミーは別荘にこもり執筆活動をするが、お手伝いとして雇われたポルトガル人のオーレリアに恋をする。
互いに言葉が通じないながらも、やがて二人の想いが同じであることが分かってくる。
最愛の妻を亡くした傷心のダニエルは義理の息子サムとの生活を始めるが、サムは手の届かない学校の人気者ジョアンナへの片想いに苦しんでいた。
親友のピーターとジュリエットの結婚を祝福するマークは、実はジュリエットへの恋心を隠していた。
しかしあることから彼の本心がジュリエットに知られてしまう。
デザイン会社の社長ハリーは若手社員のミアにアプローチされ浮気心を起こしてしまう。
そしてハリーが自分のためではないクリスマスプレゼントを用意していたことを知り、彼の妻カレンは深く傷つくことになる。
ハリーの会社で働くサラは同僚のカールに恋をしているが、精神疾患を患っている弟の存在もあり一歩を踏み出すことが出来ない。
そして英国首相のデイヴィッドは公邸の配膳係のナタリーに恋をするが、首相としての立場からアプローチをすることが出来ない。
他にもセックスをするためにアメリカへ旅立つコリンや、セックスシーンのスタンドイン俳優ジョンとジュディの不器用な恋などなど、どのエピソードも個性的で面白い。
そしてどこかで皆が繫がっている。
個人的にはやはりデイヴィッドの存在感が強かった。
様々な縛りのある中で、それでもナタリーにちょっかいを出した米国大統領に真っ向から立ち向かう姿は格好良かった。
かなり出来過ぎのエピソードも多いが、世の中には星の数ほど男女がいるわけで、当然星の数ほど恋愛のパターンもあるのだ。
だからあり得ないと切り捨てられるエピソードはひとつもないのだと思う。
誰だって好きな人に拒絶されるのは怖い。
それでも勇気を出して一歩を踏み出さなければ関係は絶対に発展しない。
勇気を持って行動を起こす彼らにエールを送りたくなるような作品だった。
ヒースロー空港で恋人や家族や友達が様々な形で抱き合う映像には心が暖かくなった。