愛についてのキンゼイ・レポート : 映画評論・批評
2005年8月16日更新
2005年8月27日よりシネマスクエアとうきゅうほかにてロードショー
セックスを学ぶことは、アメリカ社会を知ることなのかも
あの有名なセックス・レポートのキンゼイ博士が、生物学者だったとは知らなかった。その性意識調査のスポンサーがロックフェラー財団だったこと、キンゼイが教鞭を取っていた1940年代のアメリカの大学では、衛生学の授業でセックスを教えていたことetc。ヘーッ?知らなかったと驚くことがたくさん出てくる。すごく勉強になる映画だ。
特に驚くのが、アメリカ社会の、セックスに対する閉鎖性だ。男性の性意識調査を拍手で迎えた社会が、女性版になるとバッシングの嵐に変わる。自由の国アメリカは、同時にセックスを罪悪視するピューリタンの国でもあったと、今さらながら痛感させられた。妊娠中絶禁止法案を選挙戦術に使ったブッシュが大統領に当選する国だもの。この保守性は今も変わっていない。だからこそ、どんなセックスにも偏見を持たなかったキンゼイを、今、描く意味がある。
それにしても、興味や疑問を持つと追跡調査&実験してみないと気がすまない、キンゼイの学者キャラが面白い。元々彼には同性愛の志向もあったらしいのだが、助手の一人がゲイと知り、さっそく実験に及んでしまうシーンは爆笑だ。
(森山京子)