劇場公開日 2025年2月28日

「テーマは人形?・・・傀儡(あやつり人形)の謡」イノセンス 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5テーマは人形?・・・傀儡(あやつり人形)の謡

2025年3月10日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

傀儡謡(かいらいよう)
75人の民謡歌手(西田和枝社中)が朗々と謡う。
この、なんともインパクトのあるBGM。

押井守作品は初体験です。
なんとも妖しく美しくエロティックなガイノイド
(アンドロイド=ロボット=人形)

電脳(インターネット)世界の2034年(僅か9年後)
客に弄ばれ、客を殺したガイノイドが、自死した。
その犯罪を捜査するのは2人の刑事バトーとトグサ。

ガイノイドの商品開発・製造に関わる元締め
ロクス・ソルス社の北端にある択捉基地へ
刑事2人は飛ぶ。
マトリックスに影響を与えたという映像は、なんとも言えない
魅力と難解さと美しさと破壊力に富み
見たこともない世界観とか、哲学的引用に心を鷲掴みにされた。

人形が竹久夢二の絵の美女のようでもあり、
哀しい表情をして、
また眼の中は目玉がブルー。
前半はともかくエロティック。
愛玩(ダッチワイフ)が自我を持ち、持ち主を殺して
自己を消去する。

ロクス・クロス社のオーナー(黒幕)のキムもまた
アンドロイド。
死にかけた状態で登場する。
バトーの守護神の少佐(草薙素子)はラストで登場するものの、
ガイノイドの素子も、自分を電脳世界に閉じ込め、
Androidとしての外見を廃棄処分してしまう。
(あなたが電脳世界で呼ぶとき、いつもそばにいるわ)と、
言い残して。
ロクス・クロス社を素子の助けで、完全制圧。
その船には子供(魂を吹き込まれた人形の原型か?)
をガイノイドに変えていた?

摩訶不思議でダイナミックなSF世界だが、
突き詰めた所、
バトーの“恋の物語“だと押井守監督は言っている。
前作で草薙素子を失ったバトーが素子と再会する話で、
あるとのこと。
バトーの愛玩犬(も、またロボット)
ラストでコバトが娘に渡す人形も意味深。

壮大な世界観に圧倒された。
AIなら、心の繋がりは望めないだろう。
だから傀儡謡の万葉言葉に底知れぬ
ドラッグのような禁忌と謎があった。

初体験の押井守作品。
押井守のアニメーションの壮大さ、
脳内の巨大な宇宙空間に、
恐れ慄き魅了されたが、
私若きに理解は遠く及ばないが、
凄いものを観た。

琥珀糖