イノセンスのレビュー・感想・評価
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GHOST IN THE SHELLとセットで観て欲しい
過去に攻殻機動隊関連を観たことが無く、初めてGHOST IN THE SHELLを鑑賞した後、続けてイノセンスも鑑賞しました。GHOST IN THE SHELLのアクション、ストーリー展開がとても格好良く好きな作品だったので、イノセンスも期待して鑑賞しましたが、比較すると内容に少し物足りなさを感じてしまいました。ただ作品自体の空気感だったり、GHOST IN THE SHELL後のバトーの心情を垣間見る事が出来る点は良かったです。
犬の存在に癒される
ゴーストは何処の彼方へ
『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊』の続編。
【ストーリー】
2034年。
公安9課から素子が消えて3年が経った。
隊を率いるバトーは、自分と同レベルのサイボーグ要員がいなくなった現状にフラストレーションをかかえつつ、その日も事件進行中の現場にむかう。
アンドロイドたちの暴走事故が多発していた。
製造はロクス・ソロス社のタイプ2052 ・ハダリ。
現場の凄惨さに不快をおぼえながら、バトーは少女型アンドロイドを鎮圧する。
鑑識の結果、セクサロイドにはゴーストダビングの痕跡があった。
生体——生きた人間——から直接ゴーストをコピーする違法技術である。
ダビング元の人間は脳死状態になり、健常に戻れたケースはない。
もう一つ、ハダリには性行為機能が後づけされていた。
セクサロイドである。
テロの可能性なしと、捜査はバトーとトグサの専従に。
バトーはトグサにたよらず、現場におもむいてはスタンドプレーをくり返す。
「少しは俺たちを信頼しろ」
課員たちは、行動が素子に似てゆくバトーに危機感をつのらせてゆく。
一応SF用語の解説など。
サイボーグ:体を義肢、義体に取りかえた人間
アンドロイド:人間型ロボット
セクサロイド:性行為機能のついたアンドロイド
今作では「ガイノイド」と呼ばれてはいますが、アンドロイドのことです。
「サイボーグは、どこまで人間なのか」という議論について、原作では素子が友だちとパフェ食べながら茶飲みの話題として描かれてます。
士郎政宗の原作では、キャラクターはあんまり悩んだりしないんですね。
そこをシリアスに膨らませるからこその押井守。
人間とはなんなのか、「自分」なんてものはないんじゃないかという、根源に対する疑問を、くり返し視聴者に提示してくる。
自分ちゃらんぽらんで、そこらへんの草でも食って生きてりゃいいやっていう田夫野人なので、押井守はじめ繊細な文学的悩みをはらんだ作品は、心を切りさく刃物のような刺激物でもあります。
めんどくさ、と思う部分ももちろんありますけど。
押井守の映画がそこいらの文学作品で終わらないのは、アクションシーンの鋭いカット割と、類まれなる映像のセンス。
時間が経っても、マトリックスやスターウォーズのように古くならない。
まあフォロワーが少ないってのもありますが、それでも画面はお金かけられるだけかけてリッチに作ってあって、アニメーションの動きも、端々に気配りがされてます。
製作費が安いときはとことん画面安いのが、悩ましい点ですが。
『ASSAULT GIRLS』とか。
球体関節の少女も、独特のインモラルさを匂わせてて、いいですね。
自分若いころ吉田良の『天野可淡人形写真集 KATAN DOLL RETROSPECTIVE』欲しくて欲しくて、でもお金なくて、毎日本屋で立ち読みしてました。
最後の一冊が売れたあとの、あのぽっかり空いた心の空白、まだ自分の中にあっておどろきます。
音楽も善きですねー。
川井憲次の『傀儡謳(くぐつうた)』
そこここで鳴り響いては、黄泉から人形の手が伸びてくるようにこちらをいざない、常世から引きずりおろそうとしてくるあの不気味さと甘美。
たまらん。
『follow me』もいいけど、傀儡謳ずっと聴いてたい。
エンタメ度は前作に比べて低いのですが、映像美は圧倒的で、こちらを驚かせる仕掛けもたっぷり。
「当時病気してて病んでた」とここないだインタビューで語ってましたけど、そんなヤミ押井が好きな貴方なら、この作品も楽しめるはず。
病気は前立腺かな?
なんかあのころ、すぐ前立腺の話しようとしてたよね、監督。みんな止めてるのにすぐ話題を前立腺にもどしてたよね。
いいけど。
「続編の構想がある」との報道もありますから、ファンとしては、楽しみに待ちたいところです。
今だからバトーさんと共有出来た喪失感かも
今回はせっかくの特別上映で、攻殻機動隊と同じ日に駆け込みで2本続けて視聴しました。
以前観た時は、まだ1作目の攻殻機動隊の方は途中までなんとなくついていってラストから完全に振り落とされた感じだったのが、イノセンスの方は最初からあまりついていけず、北端パート以降はもはや諦めて映像美だけ追っていた状態でしたので、時間がなくて予習できなかったのもあって今回も覚悟してましたが、案外スルスル飲み込むことができました。
理由の一つはハダリが個人的に完全に不気味の谷現象で、昔は完全に無理!状態だったのが、多少見慣れたのか前ほど拒絶感がなかったこと。
そしてもう一つは、この直前に攻殻機動隊の方を視聴することで、「もう田中敦子さんの少佐はいないんだ」という喪失感を自然とバトーさんと共有できたからかな、と思っています。
いくら荒事に慣れっこの部署だからといってもバトーさんの行動がいちいち荒っぽくて共感できなかったのも、「この犬に癒されてるシーン、こんなにいる?監督の趣味が出過ぎじゃない?」と思ってたのも、そういう心の中の茶々入れが入らず受け入れられた気がします。
あとやはり世界観と映像美は圧巻。特に昔は中国語が出てくるのが全然ピンと来てなくて「こういうのって英語じゃないの?」とか思ってたんですが、今はむしろしっくり来ました。
とはいえ改めて名言?の引用は多すぎるし、ちょっとくどかったかも。
その世界の深さを感じる
わんこの存在感がすごい
20年前に劇場で見た時は「難しくて分からないけどなんか凄い、あと恐い」という5歳児みたいな感想しか出なかった私。
今回再び劇場で観た感想は「わんこのホンモノ感が凄い、あとかわいい」です。
わんこのアニメーションに気合が入りまくっていて、動きがぬるぬるな上に音が凄い。
しっぽをふりふりして床にぺしたんぺしたん当てるシーンとか「ホンモノっぽさ」を強く感じました(恐らく現実よりは誇張表現なのだけど、なぜかより現実っぽく見える、みたいな感じです❩
何が本当か分からない世界で、今を生きている動物だけが何よりもホンモノっぽく、かつ幸せそう(そしてかわいい)のが皮肉めいてて好きです。
他気になったのはバトーの義眼がかなりノイジーなこと。生体と機械の結合故のノイズ表現なのか、精神状態の表れなのか…。
電脳なら多少ノイジーでも処理できるから気にならないのかなぁ?
あとは制作陣の「描きたい画を全部詰めてみました!」感を感じながら楽しく観れました。
前回から随分感想が変わったので、また何年か後にこの作品を観た時、自分がどんな感想を抱くのか今から楽しみです
日本で作られた最高のアクション映画!
4Kで、劇場で鑑賞。
今回「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」と連続で見た。一緒に見る意味はあった!結局「GHOST IN 〜」の続編で、ちゃんと連動している話。
「GHOST IN 〜」が95年、「イノセンス」が2004年、9年後。映画としては数年後の話。
最初は、前作と違いCG満載の映像がちょっと鼻についたけど、キャラクターは基本的に線画。そのうち話にのめり込んで気にならなくなった。
話が進むにつれて、映像と言葉のラビリンスに陥るのは以前見て憶えていたけど、大画面で見るとそれだけじゃなかった!
日本で作られたアクション映画の中でもトップレベルのアクション映画だったことに驚きと喜びと高揚感で見入ってしまった。これは大画面でないと味わえない高揚感だと思う。
(アクション映画の面白さは、ただ単なるアクションシーンがすごいとかではなく、そこに至るまでの情念や思いがそのアクションシーンにしっかり裏打ちされなければ、面白みは半減する。その意味では、ガイノイドたちの想いと悲しみ、バドーの素子への思いなどが絡み合いながらアクションシーンが展開されることの面白さ。その上、気持ちが乗ることで迫力のあるアクション映像に見えてくる。)
アクション映画として最高の出来だった!やはり押井守は天才だ〜!
劇場で見て良かった!
それと、草薙素子の声をやっていた声優の田中敦子さんが去年亡くなった。
「バトー、忘れないで。貴方がネットにアクセスする時、私は必ず貴方の傍にいる…」
ラストの草薙素子の言葉は、まさしく、彼女の最後の言葉となってしまった。(涙…)
テーマは人形?・・・傀儡(あやつり人形)の謡
傀儡謡(かいらいよう)
75人の民謡歌手(西田和枝社中)が朗々と謡う。
この、なんともインパクトのあるBGM。
押井守作品は初体験です。
なんとも妖しく美しくエロティックなガイノイド
(アンドロイド=ロボット=人形)
電脳(インターネット)世界の2034年(僅か9年後)
客に弄ばれ、客を殺したガイノイドが、自死した。
その犯罪を捜査するのは2人の刑事バトーとトグサ。
ガイノイドの商品開発・製造に関わる元締め
ロクス・ソルス社の北端にある択捉基地へ
刑事2人は飛ぶ。
マトリックスに影響を与えたという映像は、なんとも言えない
魅力と難解さと美しさと破壊力に富み
見たこともない世界観とか、哲学的引用に心を鷲掴みにされた。
人形が竹久夢二の絵の美女のようでもあり、
哀しい表情をして、
また眼の中は目玉がブルー。
前半はともかくエロティック。
愛玩(ダッチワイフ)が自我を持ち、持ち主を殺して
自己を消去する。
ロクス・クロス社のオーナー(黒幕)のキムもまた
アンドロイド。
死にかけた状態で登場する。
バトーの守護神の少佐(草薙素子)はラストで登場するものの、
ガイノイドの素子も、自分を電脳世界に閉じ込め、
Androidとしての外見を廃棄処分してしまう。
(あなたが電脳世界で呼ぶとき、いつもそばにいるわ)と、
言い残して。
ロクス・クロス社を素子の助けで、完全制圧。
その船には子供(魂を吹き込まれた人形の原型か?)
をガイノイドに変えていた?
摩訶不思議でダイナミックなSF世界だが、
突き詰めた所、
バトーの“恋の物語“だと押井守監督は言っている。
前作で草薙素子を失ったバトーが素子と再会する話で、
あるとのこと。
バトーの愛玩犬(も、またロボット)
ラストでコバトが娘に渡す人形も意味深。
壮大な世界観に圧倒された。
AIなら、心の繋がりは望めないだろう。
だから傀儡謡の万葉言葉に底知れぬ
ドラッグのような禁忌と謎があった。
初体験の押井守作品。
押井守のアニメーションの壮大さ、
脳内の巨大な宇宙空間に、
恐れ慄き魅了されたが、
私若きに理解は遠く及ばないが、
凄いものを観た。
犬がかわいかった
前作のテーマを引き継ぎつつ難解
前作のテーマを引き継ぎつつ、人間の定義とは何なのか、違ったストーリーと哲学的宗教的な偉人たちの言葉を繰り広げて展開されていきます。
難解なセリフ回しのため、セリフを聴き取ることにすごい集中力を要します。
今作に使用されているCG技術が現代となっては安っぽく見えてしまい、前作のCGなしの映像美の感動までは行き届かず。
前作とは違い、自暴自棄のようなバトー。
任務を通してバトーが救われていく姿に、(片思いの相手に再会できた喜び?)最期はホッとします。
攻殻、イノセンスを何回も観てきた身としては、今回の2作同時リマスター上映は、とても嬉しかった。
同日鑑賞できて、一作目と二作目のリンクするシーンや台詞等を認識できて、おもしろかったです。
イノセンスも単体で鑑賞すると、引き込まれるのですが…
同日鑑賞して比較できてしまうと、やはり前作の偉大さには届かないかなと思います。
世界は偉人たちの水準で生きることはできない。
『理解』とは概ね願望に基づくものだしゴーストの数だけあんのさ
わかったようでわからなかった
・こちらも初見。一作目を観なくても思った。しかし観ておいて本当に良かった。草薙と馬頭の関係性が軸になっていた。草薙がネットの世界を彷徨って?いるのも知らないとわけがわからなくなっていた。前作を観終えてすぐ視聴した。映像表現の進歩と草薙が全然でない事に驚いた。観終えて思ったのはわかったようでわからなかったという事。
・記憶が人格に強い影響を与えているかという事を改めて考えさせられる。人形が動けば生命なのか、生殖ができなければ人形は人形のまま生命じゃないのか。そして人形は生命になりたいのかなりたくないのか。
・人形になりたくないと女の子が叫んだ。それは死ぬのが怖いという意味だと思った。人形も元々は人間の人格からコピーしているようだった。それなら死の恐怖もあるのだろうか。順応したらパーツを交換して生まれ変われる前提があるように見えた。それで恐怖がないように見えた。馬頭が店で記憶にアクセスされてコントロールされた時に恐怖を抱いているようだったけれど。死ぬという概念がないのはどんな感覚なのだろう。
・違法製造されていた人形は助けて助けてと痛々しかった。そして自殺?自戒?した。それは滅びない肉体という事がわかった上だからこそ、この絶望が永遠に続くのだという事なのだろうか。理解できない状況に戸惑っていたからなのか。
おそらく裏のストーリーが隠されている
個人的な考察です。
イノセンスでは表裏ふたつのストーリーが螺旋を描いているように見えます。もし、後述する「裏のストーリー」の解釈が正しく、これほど丁寧に隠蔽しているのであれば、本作は驚異的な芸術性と完成度を有しています。私ほそう信じたいひとりです。
【表のストーリー】
多くのレビューに書かれるとおり比較的シンプルです。主人公バトーが被害者少女を助けます。ざっくりと、企業による悪事、ガイノイドの暴走、悪事の露見と隠蔽、公安による摘発、原因の解明という流れです。個々の哲学的なコトバの考察は割愛しますが、裏を匂わせるいくつもの暗示が盛り込まれているようです。
【裏のストーリー】
あきらかに視点が異なります。
それは敗者への眼差し、とくに救済されない者の絶望と悲哀を強調するものです。
主人公はハダリ、被害者もまたハダリです。ハダリは性玩具の躯体を持ち、そこにはゴーストダビングされた「ひとの自意識」が閉じ込められました。ハダリは生きていたのです。自意識は救済を求めますが、人形の夢が叶うことはけっしてありません。身に生じた圧倒的な不条理と、神と来世に祈るばかりの絶望は、やがて怨恨となります。このことはテーマ曲「傀儡謡 怨恨みて散る」の歌詞で述べられています。怨恨はハダリ自らを暴走そして自害へと突き動かします。終盤のバトーの苛立ちは、ハダリが味わった救いようのない絶望を認識したためです。
私がハダリを主人公とした裏のストーリーを
このように推測した5つの根拠を示します。
- 根拠1
「生死去来棚頭傀儡一線断時落落磊磊」は
世阿弥の「花鏡」で引用されていることばです
- 根拠2
テーマ曲「傀儡謡 怨恨みて散る」の歌詞の冒頭で唐突に、鵺(ぬえ) と 月がでてきます
- 根拠3
世阿弥の能の演目に「鵺」という作品があります。一般的に、鵺は鳥の名前で哀しみや不吉の象徴です。能の演目中の「鵺」は人の形をした化け物で、世を乱した罪で英雄に討たれるのですが、成仏できずにおります。なにやら謡いながら、身の救済を懇願してくるのです。しかし仏僧をもってしても救済かなわず、自分はふつうの生物ではないから月(仏)の光が届くことはないのだといいます。そうして暗所に閉じ込められ川のくらい底へ沈んでゆきます。
- 根拠4
テーマ曲「傀儡謡 怨恨みて散る」に「花」がでてきます。ふたたび世阿弥によれば、能における花とは美しく変容する心のことです。しかし歌詞のなかで、花は散ります。ハダリの心が絶望と怨恨に満たされていくことに通じています。
- 懇願5
映画の街の場面で「月度?鵺」という看板が映しだされます。月(仏)は鵺を救済??と、素直に訳すことができます。
さいごに
世阿弥は演劇の面白さの要旨をこう述べています
「秘すれば花」
監督らしく歴史上の人物の箴言、格言が作中に散りばめられ、作画の美しさもあいまって芸術性の高い作品に昇華されていますね。
押井守監督の傑作『イノセンス』(2004)の公開20周年を記念して4Kリマスター版が2月28日から『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊』(1995)4Kリマスター版と同時で2週間限定劇場初公開。
『イノセンス』(2004/100分)
公開当時は神山健治監督のTVアニメ版『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』(2002~2003)もリリースされており、TVアニメ版とは違う世界を押井守監督が満を持して9年ぶりに制作するとあってワクワクしましたね。
前作のラスト、草薙素子少佐の失踪から3年後を描いた本作ですが『電脳化・義体化社会における人間とは』をさらに深く追求、セクサロイド機能を持つアンドロイドにまつわる所有者の惨殺事件に絡むメーカーと指定暴力団の闇をバトー(声・大塚明夫氏)、トグサ(声・山寺宏一氏)が真相究明する近未来を舞台にしたバディムービー、フィルム・ノワール。
当時の最先端3D技術で描かれたラストの択捉経済特区の街並みは4Kでさらに美麗になり完全にアートの領域。20年経っても古さを感じさせませんでしたね。
脚本は押井守監督自ら担当。
押井監督らしく釈迦や孔子、プラトン、ダビデ、マックス・ヴェーバーなど歴史上の人物の箴言、格言が作中に散りばめられ、作画の美しさもあいまって芸術性の高い作品に昇華されていますね。
音楽も前作に続き川井憲次氏。印象的な傀儡謡(くぐつうた)も前作以上に荘厳。
エンディングの伊藤君子氏『Follow Me』もフィルム・ノワールな本作のラストに実にマッチしていました。
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