「怪獣は添え物」グエムル 漢江の怪物 odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
怪獣は添え物
王様のブランチの映画コーナーでLilicoさんが勧めていたので観てみました。
確かにぬめっとしたエイリアンモドキのモンスターが出てきますが怪獣映画と言うよりは国や米国に対する不信、不満を詰め込んだメッセージ性が際立ちます、しかも主役をわざわざドジな父親に設定、コメディ仕立てというよりは気を揉ませる趣向の家族物語でした。
登場する家族は2代の父子家庭、監督曰く母性があると情けない家族にしづらいということらしい、一風変わった作家性です。
一応、怪獣はアメリカ人の指示で大量のホルマリンを下水に不法投棄したことで漢江に棲むイモリの類?の突然変異、いわば公害の産物ですが安易に定石をなぞっただけでSFらしい工夫は感じられません。
ゴジラ程の無敵のモンスターではないので軍や警察が出動すればすぐに捕獲か退治可能、それでは尺が持ちません。そこでお決まりの軍隊を出動さないために2002年に流行ったSARSもどきのウィルスの宿主と設定、怖いのは怪獣よりウィルスということらしい。リアリティを出す為の恐怖のすり替え、まあコロナ禍の折、放射能よりリアリティはありますね。ただ怪獣がレトロウィルスに汚染されているのでとどめを刺せないと言うのはゴジラのモチーフにもなった「原子怪獣現わる(1953)」でも使われている古典的手法です。
そんな訳で怪獣は野放し状態、国が手をこまねいているので米軍出動となるが怪獣退治ではなく消毒剤散布というはぐらかし、結局立ち向ったのは怪獣に中学生の娘をさらわれた家族だけ、祖父は漢江沿いの公園のしがない売店の主、父は売り子、叔母はアーチェリーの選手ですが優柔不断、叔父は大学は出てもニート状態、それでもみんな娘を愛しています。そんな血縁者たちの娘救出作戦の虚しいプロセスが延々続きます。
ようやく唐突に登場したホームレスの力を借りて左翼かぶれの叔父の火炎びん作戦、ドジ父も覚醒、叔母も一矢報います、感動の結末、かと思いきや理不尽な悲劇趣味に唖然。
総じて監督の鬱積した国家体制への不満、愚痴に振り回されただけでしたが韓国では多くの若者の共感を得るのでしょう。
単純な怪獣もの、娯楽作品を期待していただけに肩すかし感は拭えません、怪獣ものというよりパラサイトでアカデミー賞をとったポン・ジュノ監督作品と言うことでの推しだったのでしょう、Lilicoさんに注文はありませんが今後、女性の勧める怪獣映画は要注意と学びました。