劇場公開日 1988年10月8日

「自由人と他の立場の人々との価値観の違い」グッドモーニング,ベトナム Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0自由人と他の立場の人々との価値観の違い

2013年3月4日
PCから投稿
鑑賞方法:TV地上波、CS/BS/ケーブル

難しい

総合:75点
ストーリー: 75
キャスト: 75
演出: 75
ビジュアル: 75
音楽: 75

 自由の国アメリカといえどもまだベトナム戦争時にはこんなにお堅い検閲がされていたのだなと思わせる作品。

 とにかく価値観が違う。ロビン・ウィリアムズ演じるエイドリアン・クロンナウアーの生き様は自由に楽しく。たとえ戦争中のベトナムに来ても自分のやり方を変える気はない。元々そんな戦争とか政治とか国境とかは関係ないのだろう。街に出れば女の子に目がいくし、軍規に縛られたお堅いだけの放送よりも聞いて楽しい放送が好きだし、アメリカ人だろうがベトナム人だろうが人は人としてみなす。だからこそ厳しさの中に楽しみが欲しい戦場の兵士の支持を受ける一方で、アメリカと軍の利益を守りたい一部のがちがちの軍人からは目を付けられ嫌がらせを受ける。
 だがやはり厳然と存在するベトナムとアメリカとの立場の差。人としていい人であっても、単純に交流するには埋め難い溝があることがある。外国人に家族を殺され友人を殺され国を破壊され搾取された人々にとって、今猶自国にやってきて同胞を殺している外国人を素直に受け入れられないのはやむを得ない。またベトナム人から彼の行動を見れば、すぐに自国の女に声をかける憎たらしい男に見えることだろう。
 そんな現実を突きつけられるとやはり衝撃はある。だから限界に突き当たるのはむしろ当然のこととはいえ、やはり物悲しさがあるのも事実。華やかなスター扱いもあった後、お気楽だった彼が現実に直面し立ち去る際に残す一抹の寂しさが、この時代の背景を語っている。

 ロビン・ウィリアムスの喋りは本人の即興だそうで、なかなかうまいものだと思う。これがつまらなければ彼が人気DJと言っても真実味がないわけで、その意味で充分に健闘しているし見所となっている。軍の都合など関係なく大統領を冗談のネタにしておちょくるのも笑える。これなら確かに人気が出るだろうなと思わせる。

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Cape God