「近未来の、しかし素晴らしいファンタジー」エターナル・サンシャイン 詠み人知らずさんの映画レビュー(感想・評価)
近未来の、しかし素晴らしいファンタジー
映画を見始めてしばらくして、ストーリーを忠実に追ってゆく必要はないと思った。覚えたばかりの短期記憶だけならともかく、特定の記憶だけを消し去ることは、今はまだ難しい。それを請け負う企業が出てくるこの映画は、基本的に近未来のファンタジーだ。
誰しも忘れてしまいたいことはある。主人公ジョエル(怪優ジム・キャリー)にとっては、付き合っていた魅力的な女性クレメンタイン(あのケイト・ウィンスレット)の記憶だろう。それを消すためには、一度脳の中で記憶を呼び覚ます必要がある。すると、本人はその記憶と戦うことになる。そこで、消去作業は途中で何度も中断する。それでも脳の中に残っているのは、心の深層にあって、一番その人が大事にしていることか、人には絶対見られたくないことだろう。彼が、最後まで脳にしまっておきたかったのは、母親との思い出だった。
この映画では、ジョエルの現在と過去が交互に出てくる。しかも、時間をシャッフルして。途中で、ジョエルが朝起きられなかったのが記憶を消した翌日と分かって、環が閉じた。その日、彼は出勤しないで、最寄駅から勤め先とは反対方向のモントークの海辺に出かけ、お互いに相手の記憶を消したはずのクレメンタインと再会する。これだけわかればストーリーは十分なのだろう。
一番面白かったこと;ジョエルは記憶の消去を依頼するときに、クレメンタインの悪口を散々に言った、それを録音したカセットテープが彼の許に送られてきた時、彼女にわざと聞かせ、「ちょっと間を置けばいいんだよ」と言ったところ。ジョエルは、自分の本当の姿をクレメンタインにも知ってもらいたかったに違いない。そこがとても良かった。この映画の脚本(アカデミー賞を取っている)よりも、設定が秀逸。
一つだけ気になったところ;途中で、ケイト・ウィンスレットが全く別人のように見えた。新しい映画にも出ているが、彼女は体調が変動しやすいのでは。さらに節制して、素晴らしい演技を見せ続けてほしいものだ。
