「記憶をめぐる愛情の哀しくも深いお話」エターナル・サンシャイン もしゃさんの映画レビュー(感想・評価)
記憶をめぐる愛情の哀しくも深いお話
ムードインディゴ以来すっかりはまったミシェル•ゴンドリー映画、ようやく見ることができました。
知的で無口で内向的なジョエルと、すこし突拍子もなく気まぐれのクレメンタイン。二人の出逢いは突然かのようなストーリーの始まりですが、最初の電車での会話から噛み合ってなさ全開。
でも乗っけかから割れた氷の上でふたりで横たわっているシーンの美しさにやはり…とうっとりしてしまいました笑
でもそんな二人は惹かれあって付き合って行くが…
二人は喧嘩して、クレメンタインはジョエルの記憶を消してしまい、それをしったジョエルはクレメンタインの記憶を消そうとする。
それは、ジョエルにとってクレメンタインとの楽しい過去をめぐり、それを消しさる自分の記憶の旅。思い出は、手前からなのか喧嘩した思い出がとっても多いのですよね。子供を生みたいというクレメンタインを否定したり、過去を話したがらないジョエルにクレメンタインが批判をしたり、中華飯店で酔っ払って絡んだり。っとにかく喧嘩ばかり。
そりゃあわんよね。この二人。
でも徐々に楽しい記憶が蘇り、それがどんどん消されて行くとき、ジョエルは記憶を消したくないという感情に。
くらい雪の中叫ぶジョエルは本当に悲しそう。
いろんな抵抗を自分の頭の中でしてみるものの、記憶除去は完了。ジョエルとクレメンタインはあんなに愛し合っていたのに、赤の他人に。
最後の記憶を消す時の、「この記憶も消えてしまうの’「いいさ楽しもう」からの、2人で廃墟?にいった時の記憶に。ジョエルは現実はここでクレメンタインを置いて帰ったのですが、「ここに残れば?」「いや、帰った記憶しかないんだ」「じゃせめてさよならくらい言ったことにしましょう」と顔を寄せる二人…。この記憶もなくしてしまうなんて本当に悲しいことです。
記憶を除去して、また何気ない日常に…って予想はしていましたが、オープニングに戻るの無限ループか‼︎
オープニングのシーンの浜辺でノートが破かれているのはなぜだろうと思うシーン。
付き合い始めてクレメンタインが歯ブラシを取りに行っている間に声をかけられるシーン。
泣きながら車からテープを捨てるシーン。
これが全て記憶を消した後に由来しているわけですね。
ってことは、どこが始まりでどこが終わりか…ってことがまったくわからない話なのですが、ロマンチストな読み手としては、全然性格の違う二人、壊滅的な喧嘩も時にはあるけど、二人が思いあっていればいつまでもやり直せる、そんなことを思うかな。
サブキャラクターのダメっぷりもこの二人のいい対比でとてもよかったです。記憶を消すことを正として博士に思いを寄せるメアリーは実は…過去に自分の記憶を消していたことを知らされ…とか、パトリックはジョエルがクレメンタインにかけた言葉をそのままパクってジョエルを口説くのですが…とかどいつもこいつもばかやろー。
そして、この映画で一番感じたのは、嫌な思い出や悲しい記憶って誰にでもあるものだし、特に好きな人だからこそ、その人を忘れたいってことって誰にでもあると思うのですが、好きな人を忘れてしまうほど悲しいことはないし、本当はジョエルが記憶を消したくなくなったように、好きな人との素晴らしい思い出を心にもっていれば、何度でもやり直せるはずなんですよね。そして、だからこそ人を好きでいられて、相手を許すことができればきっと何度でもやり直せる。
一時の感情で嫌なことを言ってしまったり、暴言を吐くことなんて誰にでもあるし、それを繰り返しても許していける。
最後のシーンでジョエルが自分の記憶を消すテープを再生しているときに、「彼女とは合わない、心が通じない」という自らの暴言を聞いて、気付き、クレメンタインを追いかけ、クレメンタインが「きっとまた息がつまる」と言った時に、ジョエルが「いいさ」と言ったのが、この事を強く感じさせてくれました。
映像美、記憶をつかった愛ということに対しての切り込み方、ストーリーの妙、全てが自分的にはとってもよかったです。