「恋から愛へ」エターナル・サンシャイン 因果さんの映画レビュー(感想・評価)
恋から愛へ
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鎮火した恋の辿るべき道は少ない。ジョエルとクレメンタインはその最も常套なアンサーとして別離を選択する。しかしこの別離において本作は少し不思議(つまりSF)な道具を用いる。それは記憶の消去だ。2人はそれぞれ相手についての記憶の消去手術を受けた。
記憶という時空の前後も位置も曖昧な領域を、ジョエルがウディ・アレンの『アニー・ホール』よろしく縦横無尽に飛び回るような映像記述にはそれだけで一見の価値がある。
もはや場所も服装も髪型も不明瞭だけど、それでも強烈に浮かび上がってくる映像、言葉、交流。心の奥底にいつの間にか深く刻まれていたもの。ジョエルはそれらを追憶することを通じて、次第にクレメンタインとの思い出の代替不可能性を実感する。彼女の不在はもはや自己自身の不在にも等しいのだと、ようやくジョエルは気が付いたのだ。
紆余曲折を経てジョエルとクレメンタインは再び結ばれる。しかしそこには出会った当初のように熱烈で刹那的な恋の気配は存在しない。代わりにあるのは愛だ。両者の記憶の底で分かち難く結びついた相手の強烈なイメージが生み出した愛。そしてその愛は、凡庸や退屈や停滞をすべて優しく呑み込んでいく。
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