劇場公開日 1992年7月18日

「大人になってから見ると、違う」紅の豚 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0大人になってから見ると、違う

2025年5月31日
PCから投稿
鑑賞方法:TV地上波

子どもの頃はあんまりおもしろく感じれなかったこの作品も、大人になってみると面白さがわかってくる。宮崎駿監督はこの映画を作ったことを後悔しているようなことを口にする時があるのだけど、こういう映画も世の中には必要じゃないかな。
第一次世界大戦から第二次大戦の間のきな臭い時代を舞台に、飛空艇乗りが夢を馳せることができた最後の時代をコミカルかつ、かっこよく描くこの作品、滅んでいくものへの哀悼を詰め込んだ内容と言える。ロマンは現実に滅んだかもしれないが、こうして映画の中にだけでも残っているって、それ自体が生きる希望になると思うのだ。大人にもたまにはユートピアに逃げる必要がある、現実は本当に大変だから。
実際、内容的にはことごとく男のロマンを詰め込んだような内容なのだけど、それがギリギリ気恥ずかしさを回避できているのは、主人公が豚だからだろう。人間のまま展開したら気恥ずかしすぎてダメだったと思う。

杉本穂高