「黄金色のドームを持ち、燦然と輝いているマサチューセッツ州議会議事堂をサリバンは見つめるその意味は深い」ディパーテッド あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
黄金色のドームを持ち、燦然と輝いているマサチューセッツ州議会議事堂をサリバンは見つめるその意味は深い
ディパーテッド
タイトルの英語の意味は単に「死人」
映画の内容からすると、日本語の「死人に口無し」ぐらいの意味でつけられたらタイトルだと思う
そのような会話のやり取りやシーンが多い
内通者が誰だか分からない時はどうするか?
コステロは、その時は部下をみんな殺すのさというのだ
大元の筋は香港映画のままだが、ボストンの南側アイルランド系住民街サウスシーを舞台にしている
調べてみると、コステロなどの本作のエピソードの多くはボストンのその地域で実在した人物や実際にあった事件や出来事をモチーフにしてあるという
ギャングとFBIとの癒着まで実話だという
劇中何度も写る美しい黄金色のドームを持つ建物
あれはマサチューセッツ州議会議事堂
コステロに相当する70年代から80年代に実在した人物の兄弟が上院議員だからだ
その兄弟は暗黒街と、政治の両方のトップとしてボストンに君臨していたのだ
だからあのシーンをみた米国の観客はもちろんそれを認識して、スクリーンに写る美しい議事堂に込められた意味を分かって見ている
自由と民主主義の殿堂であるはずの議事堂
そもそもマサチューセッツ州は、メイフラワー号が到着したところ
合衆国の始まりの土地
その州議会議事堂なのだ
だからこそ黄金色のドームを持ち、燦然と輝いているのだ
しかし、そこの主がギャングの兄弟の片割れなのだ
天を仰ぐような、果てしない絶望だ
マット・デイモンが演じる、サリバン刑事はギャング側が州警察に送り込んだスパイだ
彼が住まう広いアパートから議事堂が見える
彼はその議事堂を見つめるのだ
どこまでも伸びる暗黒街の手の長さ
逃れようがない絶望がそうさせたシーンなのだと思う
前半は設定と人物紹介に当てられているが、いささか長い
そのためシーンの切り替えを早いテンポでどんどん切り替える工夫を入れているのだが、それでも若干ダレれるし疲れる
しかし、佳境に入った後半は俄然スコセッシの実力が炸裂している
これほど興奮し心臓がバクバクする緊迫感を味わった映画も久しぶりだ
クライマックスの顛末は正に「ディパーテッド」
死人に口無しそのそのものだった
レオナルド・ディカプリオは、州警察がギャング側に潜入させた秘密捜査官
レオナルド・ディカプリオ32歳、マット・デイモン36歳
ギャング映画の世界は、アンタッチャブルのように戦前の話、イタリアマフィアのゴッドファーザーの世界は70年代ぐらいまでの話
21世紀の現代ではもはや過去の話
過ぎ去った時代の神話のはずだった
それがこの二人ように若い世代でも繰り返されている
それもより深刻に
その絶望で映画は終わるのだ
サリバンの子供を身ごもった、精神科医のマドリンだけがただ一人真実を知ったまま生きている
そのことにサリバンは気がついてエンドマークとなる
ディパーテッド
死人に口無し
マドリンの運命が暗示されている
強烈な印象が残る映画だ
あき240さん、背景の情報提供有難うございます
実在した人物や実際にあった事件や出来事をモチーフにしていたのですね。
ギャングとFBIとの癒着まで実話とは、驚きです。