劇場公開日 2025年12月12日

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「この映画の見どころの一つは、子どもも大人も全身から喜びがあふれてい...」ホワイトハンドコーラスNIPPON Brüderよろこびのウィーン nalpathiさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0 この映画の見どころの一つは、子どもも大人も全身から喜びがあふれてい...

2025年12月16日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

幸せ

癒される

この映画の見どころの一つは、子どもも大人も全身から喜びがあふれている様子、全身で喜びを表現している姿だと思う。
重いテーマと受け取られがちな題材を扱っているが、そうは感じさせない。

多くの人にとって普段は触れる機会がなさそうな障がいを持った人が登場する。
どの人も、私たち一人ひとりと同じように、これまでの人生の中で傷ついたり挫折したりしているはずだ。

この映画は一人ひとりの登場人物のそういった「物語」、心のうちや大事にしているものを丁寧に拾っている。私たちと同じようにとても地味なはずの日常をすくい上げている。その素朴な語りに聞き入ると、いつのまにか登場人物に自分を重ねている。

そんな中で、例えば繊細そうに見える子が意外と力強かったり、小さな発見がいろいろある。弱さも抱えているはずなのに、驚くほど前向きに困難を乗り越えていく過程が描かれていて、いつのまにか力づけられている自分に気づく。

子どもを見守り支える大人の眼差しも見どころの一つだ。劇中には出てこないが、子どもたちをウィーンに連れていくため、寄付を募って奔走する大人たちがいると後から知った。本人は「子どもたちにしてあげたいという気持ちがどこから湧いてくるのか」と聞かれると、「してあげようとは思っていない。自分が子どもたちからたくさんもらっている」と答えた。まさにそのような大人たちが出てくる。

ちょっとした楽しさとしては、「チラシのこの写真はこの場面に出てくるのか!」といった意外さのある答え合わせのようなところもある。

話を戻すと、この映画の良さは、自分と他人の違いを忘れるというところにあるかもしれない。
インクルーシブという横文字とか建て前とか堅苦しいことは何もかも忘れて、映画の与えてくれる空間に、音楽に身を任せて浸ればいい。
その先に何があるのかは、観た人たち同士にしか共有できない世界がある。
映画を観た日は、劇中歌が頭の中で一日中鳴りやまなかった。

nalpathi