「長年の垢を落とした様なさっぱりした気分で映画館を後に」落語家の業 La Stradaさんの映画レビュー(感想・評価)
長年の垢を落とした様なさっぱりした気分で映画館を後に
テレビは勿論の事、一般の寄席でも見る事の出来ない落語家、快楽亭ブラックの半生を追ったドキュメンタリーです。彼の嘗ての高座の映像を見ると、皇室ネタのバレ噺(エロネタ)を堂々と語っており、こりゃあアンダーグラウンドで生きて行くしかないわぁと納得できます。でも、彼の素晴らしいのは、それが反権力とかいう大層な思想に基づくのではなく、単なる受け狙いの為せる業だという点です。でも、ギャンブルと借金にまみれ社会の落伍者に見える彼の生き方こそ、師匠の立川談志のいう「落語は業の肯定」を生きる姿なのかもしれません。
彼の遣る事為す事は横紙破りなのに痛快で、ドキュメンタリーでこれほど笑ったのは初めてです。こんな無茶苦茶な人間が身内に居たら迷惑この上ないでしょうが、「全てをシャレのめす」と言う覚悟がカッコいいのです。そして本作中一番の見せ場で、客席が一気に盛り上がり「うぉ~」と上映中に歓声と拍手が上がったなんてのは初めての経験でした。
更に、上映後の舞台挨拶では、本編を上回るパッションにすっかり遣られてしまいました。全てがお行儀よく刈り揃えられて行く現代にあって、長年の垢を落とした様なさっぱりした気分で映画館を後にしたのでした。
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