春の木
解説・あらすじ
2025年・第38回東京国際映画祭コンペティション部門出品。チャン・リュル監督が最優秀監督賞(「裏か表か?」のアレッシオ・リゴ・デ・リーギ&マッテオ・ゾッピス監督と2作品同時受賞)、ワン・チュアンジュンが最優秀男優賞を受賞。
2025年製作/121分/中国
原題または英題:春樹 Mothertongue
2025年・第38回東京国際映画祭コンペティション部門出品。チャン・リュル監督が最優秀監督賞(「裏か表か?」のアレッシオ・リゴ・デ・リーギ&マッテオ・ゾッピス監督と2作品同時受賞)、ワン・チュアンジュンが最優秀男優賞を受賞。
2025年製作/121分/中国
原題または英題:春樹 Mothertongue
主要な女性3人が非常に美しくて、その他野郎ども含め何だか物足りなさを感じてしまった作品です。
中国語の方言が重要なキーとなっていましたが、ほとんどその言葉を知らない自分のような者には、作品が持つ醍醐味を十分に味わうことはできない気がします。
現代中国が見事に切り取られていてしかも少しだけ郷愁めいた雰囲気もあったので、静かな作品が好みで中国語に精通している人にとってはたまらない作品かもしれません。自分にとってはちょっとした笑いも、その人にとっては大きな笑いになるかも─。
視点や時空など工夫を凝らした映像で、淡々としている割には見応えがあった気がします。
役者としての夢破れた女性が故郷に戻り、子役時代の恩師に再会するも…
地元の方言を忘れてしまった元女優と認知症となってしまった恩師。“忘却”が紡ぐ奇縁を描くが、実は映画への“忘却”もある。地元にある閉鎖された映画撮影所が取り壊しが決まっている。撮影所が無くなれば、そこで映画を撮っていた人々の思いや情熱までもが“忘却”してしまう。実は本作監督が一番腐心したのは、その撮影所を使って最後の作品を撮る事で、使用許可が下りてから脚本を書いたそう。
お話自体は、これといって大きな出来事や劇的展開は起こらない。普通なら「つまらない」と一刀両断してしまうのだが、本作は何故かそうならなかった。元女優と恩師の息子との微妙な関係が、観ていてなんとなくの心地良さを感じた。
セリフに関しては、喋っている言語が北京語なのか成都方言なのかを字幕で明記している。表現のニュアンスの違いを補足しているのだけど、中国語に詳しくない人(喋れない人)にしか伝わらないだろう。実際、劇場では中国人らしき観客から笑い声が起こっていたし。
ラストは一応団円なんだろうけど、無言でピアノの音階を繰り返すあたりになんとなく不穏さを感じた。でもそれもなんか良かった。