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「どうしても諦めきれないんだよ」怪獣と老人 富士の天然水さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0 どうしても諦めきれないんだよ

2025年10月16日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

自分は特撮や怪獣ファンとして
村瀬継蔵さんを知り、
後にその人柄に魅了された1人である。

憧れの映画関係者と対面しても、
ここまで人そのものにまで魅了される
という経験をしたのは稀である。

印象は優しくてお茶目、
見ず知らずの一ファンにも
丁寧に接してくれた。

不思議なのは、たしかに
おじいさんではあるものの、
あまりそう感じさせないその人柄。

この『怪獣と老人』は、
継蔵さんの最初で最後の監督作品が
完成するまでと、その不思議な
魅力の理由も記録されている。

たしかに「老人」ではあるが、
中身は「少年」。

一ファンにも気さくに接してくれたのも、
長生きの末に手にした寛容さよりもむしろ、

「キミも好きなの??いいよなこれ!
こうしたらもっと面白いよな!」

という少年の好奇心や発想のままに
生きていただけだからのように感じた。

しかし「怪獣少年」を襲う老い、病。
それに反して大きくなっていく作品。

「だれもやらないなら自分がやる」
豊富に溢れる技術と経験と情熱。

「ぼくもいつまで生きるかわからない」
人手も資金も、そして時間もない。

せめぎあう意欲と不安。

老人だからと言って
未来に希望がないわけではない。

怪獣よりも手強い、初めて遭遇する
数々の問題たちを相手に、

手を貸してくれる
仲間たちとの最後の戦いを、
時に熱く、時に落ち込みながらも、

ゆっくりでも前に
進み続けた継蔵さんを、

例え特撮や怪獣と
関係なかったとしても、
ひとりの人間として
自分は心底敬愛する。

富士の天然水